「あのブドウの実はすっぱい」
物欲しそうに見上げていたブドウの房をあきらめて、狐がその場を立ち去ろうとした時です。肩越しに声がしました。
「おい、あの実が本当にすっぺえかどうか、たしかめてみたくはねえか?」
狐がおどろいて振り向くに、オオカミがいました。
うわぁっ!
「おいどうなんだ、あの実が本当にすっぺえかどうか、たしかめてみたくはねえか?」
「そ、そりゃあ、もう。ハハ・・・、それにこしたこたあございません」
ちょうどそこに、ヘビがにょろにょろはってきました。
「おい、ヘビ」とオオカミが声をかけました。「ちょっくら、あの樹ぃのぼって、あのブドウの実を落としてくれねえか」
ヘビもべつに急ぐ用事もなかったので、返事ひとつでブドウの樹によじのぼりました。そうして、お目当てのブドウの房のところにたどりつきました。
「じゃあ、その房、どーんと落としておくれでないか?」
狐が言いました。ヘビは困った顔をしました。
「どうしたい?」
「ダメなんです」
「どうして?」
「手も足も出ないんだ」
オオカミも狐も首をふりました。すると、ちょうどそこにリスが通りかかりました。
「おい、リス」
狐が呼び止め、同じことを言いました。するするっとリスは樹をのぼっていきました。
「じゃあ、その房、どーんと落としておくんねえか?」
オオカミが言いました。両手につばをふきかけて、リスは房の根元をねじり切り始めました。
うんしょ、うんしょ。
しばらくすると、リスは困った顔をしました。
「どうしたい?」
「ダメなんです」
「どうして?」
「ち、ちからが足りないんです」
オオカミも狐も首をふりました。すると、ちょうどそこにスズメが飛んできました。
「おい、スズメ」
オオカミが声をかけると、狐が小声でささやきました。
「あいつもダメなんじゃないですか? そりゃあ、すばやくブドウの実には到達できるでしょう。でも、ほらご覧のとおり、羽ですし、ちからだってありゃしません」
「そうだな。しかし、あいつはくちばしでつつき落とすことができるんじゃねえか」
「なるほど」狐はなっとくしてスズメに言いました。「頼むよスズメさん」
「がってん」
スズメはぱっと飛び立ち、ブドウの房の上に立ちました。
「そいじゃあ、その実をつついて落としてくれ」
「はいな」
言われてスズメはいっしょうけんめいつつきましたが、ブドウはびくともしません。
「ああ、もういい」業を煮やした狐が言いました。「ああ、もういいからいいから、その実ひとつ、食べてみてくれ。それがいいですよね」
オオカミにおあいそをしました。
「あむ。こうなっては仕方がねえな」
「くやしいですが、味さえわかれば、とりあえずよしということで」
スズメはひとつぶの実をつついて皮を破り、中をひっぱりだしました。オオカミも狐もごくりとツバを飲み込みました。スズメは、のどを鳴らすようにブドウの実を口の中にいれました。
「どうだ?」
と、オオカミがたずねました。するとスズメは首をかしげるように天をあおぎました。
「味わかんねー」
それを聞いた狐とオオカミは声をそろえて叫びました。
「あのブドウは、すっぱい!」
おしまい
物欲しそうに見上げていたブドウの房をあきらめて、狐がその場を立ち去ろうとした時です。肩越しに声がしました。
「おい、あの実が本当にすっぺえかどうか、たしかめてみたくはねえか?」
狐がおどろいて振り向くに、オオカミがいました。
うわぁっ!
「おいどうなんだ、あの実が本当にすっぺえかどうか、たしかめてみたくはねえか?」
「そ、そりゃあ、もう。ハハ・・・、それにこしたこたあございません」
ちょうどそこに、ヘビがにょろにょろはってきました。
「おい、ヘビ」とオオカミが声をかけました。「ちょっくら、あの樹ぃのぼって、あのブドウの実を落としてくれねえか」
ヘビもべつに急ぐ用事もなかったので、返事ひとつでブドウの樹によじのぼりました。そうして、お目当てのブドウの房のところにたどりつきました。
「じゃあ、その房、どーんと落としておくれでないか?」
狐が言いました。ヘビは困った顔をしました。
「どうしたい?」
「ダメなんです」
「どうして?」
「手も足も出ないんだ」
オオカミも狐も首をふりました。すると、ちょうどそこにリスが通りかかりました。
「おい、リス」
狐が呼び止め、同じことを言いました。するするっとリスは樹をのぼっていきました。
「じゃあ、その房、どーんと落としておくんねえか?」
オオカミが言いました。両手につばをふきかけて、リスは房の根元をねじり切り始めました。
うんしょ、うんしょ。
しばらくすると、リスは困った顔をしました。
「どうしたい?」
「ダメなんです」
「どうして?」
「ち、ちからが足りないんです」
オオカミも狐も首をふりました。すると、ちょうどそこにスズメが飛んできました。
「おい、スズメ」
オオカミが声をかけると、狐が小声でささやきました。
「あいつもダメなんじゃないですか? そりゃあ、すばやくブドウの実には到達できるでしょう。でも、ほらご覧のとおり、羽ですし、ちからだってありゃしません」
「そうだな。しかし、あいつはくちばしでつつき落とすことができるんじゃねえか」
「なるほど」狐はなっとくしてスズメに言いました。「頼むよスズメさん」
「がってん」
スズメはぱっと飛び立ち、ブドウの房の上に立ちました。
「そいじゃあ、その実をつついて落としてくれ」
「はいな」
言われてスズメはいっしょうけんめいつつきましたが、ブドウはびくともしません。
「ああ、もういい」業を煮やした狐が言いました。「ああ、もういいからいいから、その実ひとつ、食べてみてくれ。それがいいですよね」
オオカミにおあいそをしました。
「あむ。こうなっては仕方がねえな」
「くやしいですが、味さえわかれば、とりあえずよしということで」
スズメはひとつぶの実をつついて皮を破り、中をひっぱりだしました。オオカミも狐もごくりとツバを飲み込みました。スズメは、のどを鳴らすようにブドウの実を口の中にいれました。
「どうだ?」
と、オオカミがたずねました。するとスズメは首をかしげるように天をあおぎました。
「味わかんねー」
それを聞いた狐とオオカミは声をそろえて叫びました。
「あのブドウは、すっぱい!」
おしまい
