「そこを左に曲がってーー、」
次々にスズメは正解だけを指示します。まったく過不足はありません。リトルカーの迷路もスズメの言う通りに角があり、直線があり、慎重に歩を踏みました。途中リトルカーは、なんどもケタケタ笑いました。もちろん息をころしながら。でもすぐに外にでられるのだと思うと、もう笑いが込みあげてきてしかたないのです。
この茂みに、ねずみは近づきません。
バッタもそのことをじゅうじゅう承知しており、ここに集まって隠れ住んでいたので、いろんな種類のバッタがたくさんいました。まるで楽園のようなところだったのですが、ネズミたちはだれ一人手を出せないでいたのです。
この迷路の茂みは、おおきなお屋敷の庭にあったのですが、ときどき、裏の日陰で見つけたバッタを追いかけている内に夢中になってしまい、気づくと入りこんでいる、というのが禁断の楽園にまよいこむいつものことでした。
リトルカーも同じです。いままで、注意に注意をかさねていたので、決して入りこむことはなかったのですが、きょうばかりは、大好物のコオロギをみつけてしまったのが運の尽きでした。
スズメが言いました。
「じゃあ、その直線の右にふたつ、左にひとつ、角を通り越したら、右に曲がってよ」
右にふたつ、左にひとつ、と・・・。
リトルカーはこずるそうな目をしながら、ゴールにたどりついた時のことを想像していました。
(隣のねずみのやつが外に出て、スズメもどこかに飛んでいってから、そっと尻から出よう)
とリトルカーは考えました。そうすれば、迷路から出てきたのではなく、迷路の出口をちょっと覗いているふうを装えるからです。すばやく出た方がいいかしら、それともシッポを動かしながら、ゆっくり出た方がもっといいかしら、とリトルカーは幸せなしゅんじゅんに心おどらせました。
「それじゃあ、そこを左に曲がって」
とスズメが言ったしゅんかん、リトルカーは青ざめました。ドーンと気が動転して、目の前がまっくらになり、本当に天地がひっくり返りそうになったほどでした。
リトルカーの迷路には、左角がなかったのです。
