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とおもったがはやいか、すべるようにノコギリくわがたの下にもぐりこんだユタカくんは、すかさずつのをふりあげようとしました。ところが、これはハルトくんのおもわくにまんまとひっかかっていたのでした。
ハルトくんは、すいぎゅうのようにまがったおおあごを上からふりおろし、カブトムシのせなかとおなかのあいだのみぞをはさんだのです。
「しまった!」
と、ユタカくんがおもったしゅんかんでした。
ハルトくんはぐぐっとたちあがり、おおあごをひらきました。ユタカくんは、あたまからまっさかさまです。
「しょうぶあった!」
田中せんせいのぐんばいがかえります。
「ハルト川のかち~。きまりては、のうてんおとし」
「こんどこそ!」
ユタカくんは、ちからをこめてシコをふみました。
「はっけよーい、のこった!」
こんど、ユタカくんはつのを立てたままとっしんしました。ハルトくんがくわっと、おおあごをひらきました。ユタカくんのつのが、ノコギリくわがたのおおあごのあいだにはいりこみました。ハルトくんはおもいっきりはさみましたが、あごはじゅうじにかさなるだけ。ユタカくんをとらえることはできません。
あわてたハルトくんがたいせいをくずしたすきに、ユタカくんはすばやくつのをさげ、ブン!。ノコギリくわがたは、めんこのようにちゅうにうき、せなかからどーん!。いててて・・・。
「ユタカ山のかち~。きまりて、すくいなげ。せなかおとし~」
とつぜん、こうちょうせんせいがおどりこんできて、ぐんばいをあげたので、みなドッと笑いました。

ふたりは、なんどもなんどもとっくみあいました。かったりまけたり、しょうぶは、5ぶ5ぶです。
こうしてすもうをする前、ユタカくんはハルトくんがにがてでした。でも、なんどもなんどもとりくみをしているうちに、なんだか、いっしょにえをかいているようなきになってきたのです。すごくなかのよい友だちと、きょうどうさぎょうをしているような、なんともいえないうれしいきもちがこみあげてくるのでした。
「おまえ、やるなあ!」
「おまえこそ」
さいごに、ふたりは、がっちりとあくしゅをかわしました。
っといっても、カギづめでひっかけあっただけでしたが。