「どうせ、ボクなんか!」
ハインツは顔をまっかにして言った。その様子をボブ・スキャットマンはおろおろしながら見ていた。
「ボクには!」
ハインツは羞恥心と怒りでほてりながら絵筆を床に投げつけた。
「ハインツ・・・」
「うるさい!」
心配そうな声をだした友人に対して無碍にそう叫ぶと、ハインツは部屋を飛び出した。小太りのボブは涙でそでをぬらした。
「ぶくぶく、ぶくぶく太りやがって! ボブは豚飼いにでもなればいいんだ」
ハインツは両手をポケットにつっこみ、町に向かって大股で歩きはじめました。仕事にいく時間だからです。ハインツは川べりの土手を歩いていきました。
怒りがこみあげてきます。
だいたいボブの野郎は、ボクが褒めてあげたから認められたんだ。なのに野郎は、ボクの絵を見てもうんともすんとも言わない。ボクの手法をこっそり盗んで自分のものにする。全部ボクのお陰なんだ。
半年前でした。
二人は大きな絵のコンクールに参加しました。ボブの絵は大賞を獲得しました。けれどもハインツの絵は予選すら通過しなかったのです。ボブは落ち込むハインツを自分が慰めるにもいかず、泣いて取り乱すハインツの肩にそっと手をやりました。
「触るな!」
ハインツは鋭く言い放つと、ボブの手を激しく払いのけました。
優しいボブはせっかく取った賞を辞退しました。
彼ら二人は、中等学校で合い、共に画家を志していることを知り、卒業と同時に下宿で共同生活を始め、絵の修練をつんできました。
「ボブ、このへんの色使いがうまいよ」
ハインツはニコニコしてボブの絵を評価していました。それは心のどこかに、自分はボブよりも上だという自負があったからかもしれません。
ボブは地方の素封家のうまれでした。充分な仕送りをしてもらい、絵の具やカンバスも高級なものを使うことができました。生活費を稼ぐ必要もありません。
ーーうすのろ!
ボブの得意満面のうれしそうな顔を思い出すだけでもハインツにはにがい思いがこみあげてきます。
お互いじゅうぶんな水準に達したと判断したため、大会に出品したのでした。ボブ・スキャットマンの絵は絶賛され、著名な画家のこんな言葉まで戴いたのです。
「ひさびさに有能な新人。芸術的衝動をかりたてられ、軽い嫉妬すら覚えるほどだった」
大御所の画家にこんなことを吐かせるとは、なにものにも替え難い称賛なのです。ところがハインツの絵にはだれもなにも言いませんでした。彼にとってこれ以上の屈辱はありません。ボブの絵がもてはやされ、自分の絵には目もかけられなかったのです。
ハインツは顔をまっかにして言った。その様子をボブ・スキャットマンはおろおろしながら見ていた。
「ボクには!」
ハインツは羞恥心と怒りでほてりながら絵筆を床に投げつけた。
「ハインツ・・・」
「うるさい!」
心配そうな声をだした友人に対して無碍にそう叫ぶと、ハインツは部屋を飛び出した。小太りのボブは涙でそでをぬらした。
「ぶくぶく、ぶくぶく太りやがって! ボブは豚飼いにでもなればいいんだ」
ハインツは両手をポケットにつっこみ、町に向かって大股で歩きはじめました。仕事にいく時間だからです。ハインツは川べりの土手を歩いていきました。
怒りがこみあげてきます。
だいたいボブの野郎は、ボクが褒めてあげたから認められたんだ。なのに野郎は、ボクの絵を見てもうんともすんとも言わない。ボクの手法をこっそり盗んで自分のものにする。全部ボクのお陰なんだ。
半年前でした。
二人は大きな絵のコンクールに参加しました。ボブの絵は大賞を獲得しました。けれどもハインツの絵は予選すら通過しなかったのです。ボブは落ち込むハインツを自分が慰めるにもいかず、泣いて取り乱すハインツの肩にそっと手をやりました。
「触るな!」
ハインツは鋭く言い放つと、ボブの手を激しく払いのけました。
優しいボブはせっかく取った賞を辞退しました。
彼ら二人は、中等学校で合い、共に画家を志していることを知り、卒業と同時に下宿で共同生活を始め、絵の修練をつんできました。
「ボブ、このへんの色使いがうまいよ」
ハインツはニコニコしてボブの絵を評価していました。それは心のどこかに、自分はボブよりも上だという自負があったからかもしれません。
ボブは地方の素封家のうまれでした。充分な仕送りをしてもらい、絵の具やカンバスも高級なものを使うことができました。生活費を稼ぐ必要もありません。
ーーうすのろ!
ボブの得意満面のうれしそうな顔を思い出すだけでもハインツにはにがい思いがこみあげてきます。
お互いじゅうぶんな水準に達したと判断したため、大会に出品したのでした。ボブ・スキャットマンの絵は絶賛され、著名な画家のこんな言葉まで戴いたのです。
「ひさびさに有能な新人。芸術的衝動をかりたてられ、軽い嫉妬すら覚えるほどだった」
大御所の画家にこんなことを吐かせるとは、なにものにも替え難い称賛なのです。ところがハインツの絵にはだれもなにも言いませんでした。彼にとってこれ以上の屈辱はありません。ボブの絵がもてはやされ、自分の絵には目もかけられなかったのです。
