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トッポについて語る前に、彼とヤプーは、直接の知り合いではない。駅の待合室ですぐ横に腰掛けていたことはおろか、交差点の雑踏ですれ違ったことすらなかったろう。ちいさなちいさな町に住んでいながら。そんな二人がひょんなことから出会うことになるのを、彼らはまだ夢に見たことがない。というのもトッポはどちらかと言えば女で、ヤプーとは年齢も六年へだたっていたので小中学校が重なることもなく、ゴスロリには憧れていたけれど、お気に入りの格好をして外に出歩くことはなかったし、アルバイトが終わったらすぐに部屋に閉じ籠もりっきりになって、日夜マンガを描いていたからだ。そしてなにより映画が嫌いだった。こんなふうにヤプーとは共通点がまったくなかったので、たとえ半径五十メートルの範囲に二人が住んでいたとしても、いやアパートの隣の部屋に住んでいてさえ、出会うチャンスは皆無に等しかった。そしてトッポがトッポであるゆえんは、彼がなんでもわかっている者のひとりだったからだ。これにはどんな鈍感な質の者でも賛同しないわけにはいかない。もう何年もマンガを描いていたが、描かれたマンガは誰に見せられることもなかった。数人の友達と同人を組んでいたにもかかわらずである。トッポはいつもあらすじを語るばかりで、他人のあらさがしばかりしていた。そのことを指摘されると、ご親切に。と笑った。とても下世話なことかもしれないが、二人には共通点がないわけではない。他人の嘘や不正にはとかく敏感に反応するという点である。しかしかといって、それを解決しようとか癒そうとかいう姿は見たことがない。内心、鬱々と憎悪して、しばらくすると忘れてしまうのだ。もし意識の氷山というものがあるとすれば、おそらく水面に浮いている部分をどんどん小さくしていくことで、嫌いなものを自分から捨て去ろうとしていたのにちがいない。そしてなにより、二人は同じものを拒否していた。
トッポについて語る前に、彼とヤプーは、直接の知り合いではない。駅の待合室ですぐ横に腰掛けていたことはおろか、交差点の雑踏ですれ違ったことすらなかったろう。ちいさなちいさな町に住んでいながら。そんな二人がひょんなことから出会うことになるのを、彼らはまだ夢に見たことがない。というのもトッポはどちらかと言えば女で、ヤプーとは年齢も六年へだたっていたので小中学校が重なることもなく、ゴスロリには憧れていたけれど、お気に入りの格好をして外に出歩くことはなかったし、アルバイトが終わったらすぐに部屋に閉じ籠もりっきりになって、日夜マンガを描いていたからだ。そしてなにより映画が嫌いだった。こんなふうにヤプーとは共通点がまったくなかったので、たとえ半径五十メートルの範囲に二人が住んでいたとしても、いやアパートの隣の部屋に住んでいてさえ、出会うチャンスは皆無に等しかった。そしてトッポがトッポであるゆえんは、彼がなんでもわかっている者のひとりだったからだ。これにはどんな鈍感な質の者でも賛同しないわけにはいかない。もう何年もマンガを描いていたが、描かれたマンガは誰に見せられることもなかった。数人の友達と同人を組んでいたにもかかわらずである。トッポはいつもあらすじを語るばかりで、他人のあらさがしばかりしていた。そのことを指摘されると、ご親切に。と笑った。とても下世話なことかもしれないが、二人には共通点がないわけではない。他人の嘘や不正にはとかく敏感に反応するという点である。しかしかといって、それを解決しようとか癒そうとかいう姿は見たことがない。内心、鬱々と憎悪して、しばらくすると忘れてしまうのだ。もし意識の氷山というものがあるとすれば、おそらく水面に浮いている部分をどんどん小さくしていくことで、嫌いなものを自分から捨て去ろうとしていたのにちがいない。そしてなにより、二人は同じものを拒否していた。
