2020年10月 人手過剰感は緩やかに改善するも、復調には程遠い水準 | 上下左右

上下左右

台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

約半年前に企業の人手不足・人手過剰について記事を書きましたが、そのときと比較すると緩やかに人手不足の企業が増え、逆に人手過剰な企業は減りつつあるものの、回復にはまだまだ程遠いようです。
本日発表された帝国データバンクの10月調査によると、正社員が不足している企業は34.0%(前年同月比▲16.1ポイント)となり、10月としては5年ぶりに4割を下回りました。また非正規社員が不足している企業は19.0%(前年同月比▲10.3ポイント減)で4月としては8年ぶりの1割台となりました。

<2020年4月調査>

<同10月調査>

今年の4月調査では正社員が過剰と答えた企業は21.9%(前年同月比+13.5ポイント)、非正規社員が過剰と答えた企業は21.6%(前年同月比+14.8ポイントと、正社員が過剰と感じている企業は前年比2.6倍、非正規社員が過剰と感じている企業は実に前年比3.2倍にもなり、企業の人手過剰感が一気に上昇してしまいました。
そこから半年が経過した本日発表の調査結果ですが、緩やかに改善傾向にはあるものの元通りには程遠い水準となっています。



また、従業員が「過剰」としている業種を確認してみると、4月には正社員・非正規社員ともにワースト1位だった旅館・ホテル業が、GoToキャンペーンの影響もあり、正社員がワースト7位、非正規社員がワースト9位と大きく低下しました。
なお大半の業種で人手過剰感が改善している中で、輸送用機械や出版・印刷、繊維服飾品業界は人手過剰感が悪化しています。出版・印刷業は巣籠もり需要によりむしろ活性化しそうな業界ですが、需要を映画等のサブスクリプションに食われてしまっているのでしょうか。

総務省の労働力調査でもコロナショック後の就業者数はほぼ前年比▲80万人で安定して推移しており、雇用状況の先行指標とも言える人手不足・人手過剰感の改善も非常に緩やかですので、当面この雇用情勢が継続するものと思われます。
コロナショックから設備投資も大きく減少しており、雇先行き不透明により企業が新たな動きを抑制していることがハッキリと表れています。私は普段は財政拡大には慎重な立場ですが、今は積極的な財政拡大が必要な時期だと思います。