都心オフィス空室率の上昇/リーマン前の好水準は維持 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

東京都心(中央区、港区、新宿区、中央区、渋谷区)の空室率が上昇しています。読売新聞は大手仲介業者である三鬼商事のデータを使用して「新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オフィスの「空き」が目立ち始めている。オフィス仲介大手の三鬼商事によると、東京都心の7月の空室率は前月より0・8ポイント高い2・77%と5か月連続で上昇した。テレワークの広がりを受けて企業がオフィスを縮小したり、業績悪化で新規の入居契約を見送ったりしたことが要因だ」と断言していますが、これは間違いなくデータを見ただけで一切取材せずに書いています。
私は仕事上三鬼商事の方とよく話をしますが、三鬼商事は今月の空室率の上昇について、新築ビル竣工に伴う供給床の増加と、コロナショック前から業績の悪かったテナントの(ある意味)便乗縮小が原因であると分析しています。今月増加した6.3万坪の空室のうち、ほぼ半分の3.2万坪弱は新築ビルへのオフィス移転に伴う空室です。

また、同記事には「(空室率の)5か月連続の上昇は、リーマン・ショック後の2009年9月~10年6月(10か月連続)以来となる。」とありますが、二年ほど前から『ここまでずっと空室率が下がり続けているので、予兆は見えないがそろそろ潮目が変わってもおかしくない』と言われ続けていました。今般空室率が上昇したといってもまだ2018年3月(空室率2.80%)と同水準であり、そのときの三鬼商事の発表では『平均空室率は2008年3月以来10年ぶりの2%台となりました。』、2%台の空室率は不動産マーケットが非常に好調な水準であることを示しています。
もちろん低下傾向のときと上昇傾向のときでは情勢は異なりますし、今後も緩やかに空室率が上昇していくのは間違いないと見られています。コロナショック前のマーケットであれば、新築ビル竣工に伴う移転後の空室(二次空室)も早々に後継テナントが決まっていたでしょう。
しかし、今の足元の状況だけを見てリーマンショック並みだなんだと騒ぐのは時期尚早です。富士通グループのオフィス面積半減宣言など不動産オフィスマーケットに逆風が吹いているのは疑いようがありませんが、今回はリーマンショック時と違って企業の内部留保も潤沢であり、当時のような大混乱は起きないものと見られています。

今月の空室率は数字が大きく動いたので注目を浴びましたが、そういうときこそ取材を行って事実に基づいた報道を行ってほしいと思います。