板挟みの三橋氏/種苗法改正について | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

いつも論理的な内容はともかく形は整っているのに今回の三橋氏の記事は形からして崩壊しており、彼の気苦労が偲ばれます。

◯「抱き合わせ」とは?
三橋氏曰く、今回の種苗法改正は日本国民を利する法律と、害する法律との「抱き合わせ」だそうです。
日本国民を利する部分「登録品種の種苗等が譲渡された後でも、当該種苗等を育成者の意図しない国へ輸 出する行為や意図しない地域で栽培する行為について、育成者権を及ぼせるよう 特例を設ける。 (第21条の2~第21条の4)」と、丸々抜粋しています。
では日本国民を害する部分はどこでしょうか?
何と一文も記載されていません
「育成者権を「刑事罰」付で強化し、将来的にバイエル・モンサントなどの種の独占ビジネスに結びつきかねない点が問題」とは書いたものの、どの条文が改正されることによってこの問題が引き起こされるのか、何の説明もないのです。
日本国民を利する部分は第何条だけでなく全文を抜き出してまで紹介しているのに、不思議ですね。

将来的にバイエル・モンサントなどの種の独占ビジネスに結びつきかねない点とは?
このような主張している人々は、ほぼ全員が『自家採取(自家増殖)の規制』を根拠に「(登録品種だけですが)種子を毎回買わせるなどけしからん!種子ビジネスの拡大によってグローバル企業による独占が始まる!」という論評を繰り広げます。では何故三橋氏はそう書けないのでしょうか?

◯三橋氏の立ち位置
彼が農政について何か主張するときは、農家でも日本の農業でもなく農協の立場に依って立ちますので、農協が嫌がることは基本的に書けません。
その農協は種子の更新率(≒種子の購入率)を引き上げるべく日々啓蒙に励んでいます。
ホクレン農業共同組合連合会に至っては「いかに優良な品種でも、ひとつの種子から何度も増殖を繰り返すとその品種本来の特性が少しずつ失われていきます。そうならないためには、自家種子を使用せず、北海道が指定する水稲採種ほで一般の水稲生産以上に厳格な栽培管理がなされた「採種」を使用することが極めて重要です」と、私が過去記事[種苗法改正が無い世界~自家採取が一般的だったら~]で書いたものと同様の主張をしています。
つまり「自家採取禁止などけしからん!」と書いてしまうと農協から「俺達の労力を否定するのか!」と叱られてしまうわけです

◯板挟み
完全に私の推測ですが、今回の記事は藤井聡氏あたりから種苗法改正反対の記事を書けと指示があったのではないでしょうか?しかしそのままの論調では農協の反感を買ってしまうし、中韓を非難する言葉も入れておかないと元々の支持層である保守派の支持も失いかねません。
その結果として、
①種苗法改正の海外流出防止の意義は認め、
②グローバル企業による弊害を主張し、
③②の根拠には触れない
というどっち付かずの論評になってしまったのだと思われます。

◯種の独占ビジネス
一応本文の論旨についても指摘しておきますが、今回の法改正は種の開発ビジネスのハードルを上げるのではなく下げるものです。つまり開発業者の増加こそあれ減少や独占とは逆方向の動きであり、これ自体が無茶な論理です。

三橋氏にも立場があり、苦労していることが推察される記事ですね。