コロナショックによる貧困化の始まり | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

3月の全国の完全失業率は2.5%で、前の月と比べて0.1ポイント悪化しました。
また、就業者数は前年同月比+13万人と87ヶ月連続で増加しました。
これだけ書くとまだ大した影響は表れてないように感じますが、内容を分析していくと影響が表れ始めていることが分かります。

◯就業者の業態内訳
就業者全体では+13万人ですが、その内訳は下記のとおりです。
自営業主・家族従業員:▲40万人
・正規雇用:+67万人
・非正規雇用:▲26万人
・その他(役員等):+12万人
今年4月から同一労働同一賃金の適用が始まる影響もあり、非正規雇用から正規雇用へのシフトは順調に進んでいます。正規雇用は非正規雇用と違って人数調整が困難で計画的に進める必要があるため、3月時点ではまだ影響は出てきていません。
一方で自営業については家族従業員も含め▲40万人と前年比▲5.8%も減少しており、廃業に追い込まれる自営業者が続出していることが読み取れます。営業自粛が4月から本格的に広がったことを考慮すると、翌月以降はこれ以上に減少することが予想されます。

◯業種の内訳
大きな変動があったのは下記の業種です。
<増加した業種>
医療・福祉業:+40万人
卸売・小売業:+17万人
学術研究・専門技術サービス:+13万人
運輸・郵便:+12万人
<減少した業種>
製造業:▲24万人
宿泊・飲食業:▲14万人
教育・学習支援:▲11万人
人数では製造業が最も減少していますが、分母を考慮した減少率ではやはり宿泊・飲食業の減少が著しくなっています。(▲3.4%)

◯失業者の内訳
<前年同月比>
・自発的離職者:▲8万人(▲10%)
非自発的離職者:+7万人(+20%)
収入を得る必要が生じたための求職者:+6万人(+38%)
<前月比>
・自発的離職者:▲2万人(▲3%)
・非自発的離職者:+4万人(+10%)
・収入を得る必要が生じたための求職者:+4万人(+10%)
過去記事「生活に余裕がないために雇用が増えている?」で安倍政権になって非自発的離職者と②収入を得る必要が生じたための求職者が減少していることから雇用増≠生活に困窮して働かざるを得ない国民の増加」であることを書きましたが、今月の労働力調査を見ると①②ともに大きく増加しています。
逆に自発的離職者が減少しているため完全失業者の総数に大きな変動はありませんでしたが、これは「有職者は積極的な転職を控え、一方で世帯収入が減少したため新たに就業を求める人が増えた」ということになります。
完全失業者は前年同月比+2万人、完全失業率+0.1%というシンプルな報道が目立ちますが、その内容を精査すると非常に深刻な事態が始まっていることが分かります。NHKの報道はかなり詳しく記載されていますが、失業者の内訳という重要な視点が抜けています。

くどいようですが、本格的な営業自粛が始まったのは4月からですので4月の結果は3月を遥かに超える悪化が見込まれます。
今はひたすら耐えて、一刻も早い収束に全力を注ぎましょう。