種子法廃止後、多収米の栽培が増加 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

ブログを再開してからコロナネタばかりだったので、今回はコロナ前に何度か取り上げていた種子法関係についてです。

業務米の生産がようやく拡大を始めています。20年産米 産地品種45増869銘柄 多収で良食味拡大 業務用販売を強化
 「米産地が、業務用向けの多収性品種の生産・販売を強化している。農水省が設定した2020年産米の産地品種銘柄数は前年から45増え、869となった。新たに設定された銘柄は「つきあかり」「ちほみのり」など、多収が見込める良食味品種が目立つ。堅調な需要が見込まれる中食や外食向けに、産地がJA全農や米卸と連携して多収性品種の導入を積極的に進めている
ちなみにJA全農は2020年の業務用米の契約栽培を2019年比で4割増、2018年比ではなんと約8倍にも拡大しています。2018年に何があったかと言えば、言うまでもなく種子法廃止ですね。
リンク先の記事にもあるとおり、中食や外食に使われる業務用米は米の消費量全体(727万トン)の3割を占め、安定した需要が見込まれていますが、近年は米価が上昇傾向で、実需者側は値頃な価格帯の米の調達に苦戦していました。
その一方で生産者側は種子法に縛られ、値頃な価格帯の米の生産に消極的でした。種子法があった頃は奨励品種となっている『役所が指定したブランド米』を作ってさえいれば補助金がもらえたので、『売れなければ収益にならない奨励品種以外の品種』を作ろうとしなかったのです。こうして値頃な業務米は需要が拡大しても生産は増えず、需要が縮小を続けるブランド米の生産・開発にばかりリソースが割かれた結果、日本の米は生産・消費ともに減少を続けてきました。過去記事にも書きましたが、今や「1世帯当たり(2人以上の世帯)の米の支出額は2万4314円で、パン(3万554円)より低い」ところまで米の消費は落ち込んでいます。

食料安全保障の観点からも種子法を維持させておくのは極めて危険であり、2018年4月にようやく廃止になりました。そしてその効果が覿面に現れ始めています。
種子法廃止はあまりに遅く、不可逆点はとうに越えていたと思っていましたが、まだまだ挽回の余地はあるようです。生産量の反転増加につながることを期待しましょう。