コロナ収束前に消費税減税を主張する愚 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

「消費税は逆進性が高いから低所得者ほど恩恵が大きい」という虚構のレトリックに基づいて、新型コロナウィルスの拡大収束前から消費税減税を要求する人たちがいます。
しかし高所得者ほど消費も多いので、消費税の納税額ベースでは高所得者ほど負担が大きくなります。年収300万円の人と年収3000万円の人とを比較した場合、どちらの方が消費が大きく、消費税の納税額が大きくなるでしょうか?言うまでもなく後者です。消費税の逆進性とはあくまで『高所得者ほど所得に対する消費が少なく、所得に対する税率が低い』というロジックに基づいた主張であり、所得税や住民税といった累進課税制の税金と比較した場合の話なのです。
この度政府が所得減収世帯に対して一世帯あたり30万円の給付を発表しました。年収=消費=300万円の世帯であれば30万円はほぼ消費税納税額と同額になりますが、年収3000万円、消費1500万円の世帯であれば30万円は消費税納税額の1/5にしかなりません。逆に言えば消費税を撤廃した場合、富裕層は所得制限もなしに定額給付の数倍もの恩恵を受けることができるということです。
今回の定額給付について一律給付か所得制限有りかでかなり意見は分かれましたが、消費税の減税(撤廃)は一律給付を遥かに上回る富裕層支援策なのです。

そして何より、消費税を減額することで消費活動が活性化されると感染拡大につながる恐れがあります。消費税が減額されることで自動車や耐久消費財、はては家屋の購入まで検討される方が増加しかねないわけですが、こうした高額商品を購入する際にはほとんどの方が自分の目で商品を確かめようとするでしょう。こうして外出が促されると当然感染が拡大されますから、不要不急の外出は避けるようにとの政府の要請に真っ向から反対する動きとなります。
今回の定額給付が不十分だという意見はあるでしょう。しかし消費税の減税を同時に実施することはあってはならないのです。不十分だと思うのなら増額や給付対象の拡大で十分対応できます。

未曾有の事態ですのでコロナ収束後であれば消費税減税や撤廃も一考の余地はあるでしょう。しかし収束どころかピークさえまだ不明な現状において、消費税の減税・撤廃など狂気の沙汰です。
今消費税の減税を主張している人たちは消費税減税そのものが目的であり、「コロナショックはその手段に過ぎない、消費税減税という自分の政治的主張は人命に優先する」と自白しているようなものなのです。