実質賃金で騒ぐ人が絶対に触れない統計 | 上下左右

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台湾の早期TPP加入を応援する会の代表。
他にも政治・経済について巷で見かける意見について、データとロジックに基づいて分析する・・・ことを中心に色々書き連ねています。

それが国税庁が公開している民間給与実態統計調査です。
触れない理由は『実質ベースでも賃金が下がっていないから』
民間給与実態統計調査による平成24年からの平均賃金(名目)推移を見てみると、
平成24年:408万円
平成25年:414万円(前年比+1.5%)
平成26年:415万円(同+0.0%)
平成27年:420万円(同+1.2%)
平成28年:422万円(同+0.5%)
平成29年:432万円(同+2.4%)
平成30年:441万円(同+2.1%)
と比較的順調に増加しています。

なお、実質賃金を公開している毎月勤労統計調査では各年の賃金増加率(名目)は下記のとおり。
平成25年:前年比+0.0%
平成26年:同+0.5%
平成27年:同+0.2%
平成28年:同+0.5%
平成29年:同+0.7%
平成30年:同+0.9%
民間給与実態統計調査の結果と随分違いますね。
毎月勤労統計調査では平成25年から平成30年までのトータルの賃金の伸び率は2.8%。同時期の消費者物価指数の上昇率が6.8%なので、実質賃金は▲3.8%になってしまっているわけです。(数字は概算)

ところが民間給与実態統計調査では同期間の賃金は+8.1%なので、実質賃金は+1.3%ということになります。

この違いは両統計調査の対象の違いから生じています。毎月勤労統計調査が就業一年目の労働者を含めて平均値を算出しているのに対し、民間給与実態統計調査は就業一年未満の労働者を除いて算出しているのです。
就業一年目の労働者を除けば実質賃金は上昇しているということは、賃金の低い就業一年目の労働者が増加したため実質賃金が押し下げられているということです。
日本が貧困化していると主張したい方々はこの事実を認めたくないが故に、民間給与実態統計調査については絶対に触れません。
一つの統計だけでなく様々な資料を元に判断してほしいものですね。