とは私の事である。
日程の都合上殆どの知人、友人に連絡をしていないが現在緊急一時帰国をしている。
「予定通り日程を消化できて(関内)駅前の金券ショップでいつも見ていたゾーンのチケットがあったら観に行こう」とカミさんと事前に話していた昨日のベイスターズ対スワローズの一戦をY浜スタジアムにて観戦した。
三塁側A指定が二枚で4,600円とほぼ半額になっていてお得であったが、金券ショップの店頭で
「今日のスワローズ戦の三塁側A指定のチケットはあるか?」
と問うと店員がこう答えた。
「どちらの応援をされますか?」
わたしは?である。
本当は神宮でドラゴンズ戦が見たかったのだが、そういう日程ではないから、ただただ目を慣らすのにプロの野球が見たいだけである。そしてこのカードであれば、山田、筒香のバッティングが見られるのが最大の見せ場であろう。(坂口、川端は一軍にいないし、梶谷は試合を休んだ。大いに残念であった。)
最近はどちらかを応援をしないと球場に入ってはいけないのだろうか。
球場に入って、さらに残念が続く。
16時に球場に入ると場内にはは入れるが、16時半までスタンドに入れないという。
近年のプロ野球のレベルであれば、練習こそが最も見甲斐のある時間ではないのか。16時なら一流選手がどういった打撃練習をしているのか。控え選手、特に守備自慢の野手がどのようなフィールディング練習をしているのか。こういったところを見ることでアマチュアは勉強になるし、野球界全体のレベルアップにつながると私は考えるが、これは主催者たる商い側には全く目先の儲けにならない。
より長い時間安全管理を必要とする上、このような客をスタンドに入れればコストだけで儲けにならない。そうであればコンコースに長時間待機させておきグッズなりフーズなりを買わせ、金を落とさせたい事だろう。
有難い事に警備員のお兄ちゃんが雑談に応じてくれ「通路の隙間から見える範囲で練習を見て頂いて構いません」と言ってくれたが、「端にいられると(入場待ちと勘違いして)列ができてしまうので真ん中に(仁王立ちして)見て下さい」という。
笑ってしまった。そうか、ここは日本か。人が二人立てば訳もなく整列を始めるという不思議の国。(全くどこまでお行儀が良いんだか。)
しかし、このお陰で熟練の域に達した大引の見事なグラブ裁きを拝見することが出来た。他の若手と比べると雲泥の差である。肩は何であるがスタートから捕球態勢に入りグラブを出し投げるまでの一連の無駄のない動き、速さは見事の一言である。ボールが吸い込まれるようにグラブに入るその様はまさに芸術的であった。(同時にこの時、三塁手の守備に大いなる不安を抱いた…実際にゲームでも足を引っ張った…途中の三ゴロも怪しかったが、三直が二塁打になるようでは話にならんし、最後もねえ…頑張って練習してもらいたい。)
漸く16時半にスタンドに入ってから目にした打撃練習。
「これが本当に一軍の選手か?」と思わせるその内容、それがしかも複数名いる状況に愕然とした。5年くらい前、この時間帯に打っていたCのY本Y彦あたりは柵越え連発とは言わなくてもフェンス際まで鋭いライナーを連発したものだったが、今は凡フライでしかもファールとか内野の凡ゴロ、ケージから出ないといった始末で私が打っているのかと思うほど。あまりに寂しい光景…以外に言葉が見つからない。
ゲームが始まれば、今度はおびただしい数の売り子売り子売り子である。
視界を遮ってもお構いなし。いつの間にやら売り子はほぼ女性で占められ、客(大抵オッサンん)もちょっかいを出し、にわかホステス代わりであって、ある種クラブやキャバクラ代わりなのだろうか。
しかし、これが現代の野球場であって商いの発生する良いお客たちなのであろう。
こんなに飲むからか通路は売り子に加え、常に(トイレに行き交うと思しき)客の人波でこれも視界を遮る。
「お、ここは試合展開で重要な局面」
というところであってもグランドなんて見ちゃいない。
そうである。商いにも貢献しない、トイレにも立たない私のような人種こそ現代の野球場には招かれざる客であって異質な存在なのだ。
選手の一挙一動を見逃すまいとグランドに集中している野球人こそ、現代の野球場には最も不要な存在になった。
かつての野球場ではお父さんがグランドに指をさし、我が子に「あそこを見ろ」と絶好の学習機会に指導する光景が存在したが、これはもう忘れ去られた過去、時代は代わったのである。
しかし、この日私とカミさんにとって最も異様な光景に遭遇したのは9回の表、Y崎Y晃投手の登場の場面である。場内は新手の宗教かと思わせる雰囲気である。
言っておくが私のカミさんは元々ロバート・ローズのファンであり浜っ子である。彼女をして「もう来たくもない」という異様な光景なのである。
そして案の定彼は捕まった。しかし、付近のYBファンは「この頃彼おかしいわ」と仰る。(ちなみにご高年である。)
そりゃアンタ当たり前だろ…見たまんまじゃないか…球(ストレート)が走ってないんだから抑えられる筈がない。
(それでも落ちるボールで山田と勝負する様はなかな良い対決ではあった。)
そして極め付けが延長10回裏、謎のボーク宣告である。
単純に新外国人に洗礼を浴びせたい審判団の嫌がらせである事は古くから承知しているが、日本野球界の見っとも無さ以外の何物でもない。なかなかの緊迫したゲーム展開、重要な局面で繰り出されれば興醒め、台無しである。(球審木内が安定したジャッジで試合を作ったがこれも台無しである。)
しかも最後の場面に安打が記録される公式記録などビックリ仰天摩訶不思議である。あれのどこが安打なのか。
しかし、それもこれも私が招かれざる客であって、戯言なのだ。
試合自体は、立ち上がり低めにストレート系が集まったウィーランドと尻上がりに持ち味を出した石川がゲームを作って中盤辺りまでは集中力を保った。(ウィーランドは低めにストレート系が集まれば厄介だが、カーブは恐れるほどではない。バリエーション豊富な石川の牽制、投球モーションは大いに参考になった。特に牽制は必要な場面にだけするので不快でなかった。)
中村がそれまでの観察から打つべきボールをしっかりとらえた打撃も良かったし、バレンティンが右へライナーでフェンスまで運んだ打撃も見事であった。
これで打てなきゃ二軍かな、という成績だった乙坂が勝ち越し適時打を放ってもホッとしただけでやたらガッツポーズせずニコリともしなかった(ように見えた)光景も良かった。(ライトから本塁へスローイングした雄平の肩も立派な見せ場だったが誰も関心がなかったようだ。)
杉浦のゆったりしたフォームから手元でピュッと来るストレート。しばらく(数年?)前にテレビで見ていた人と同じ人かと思うほどの別人ぶりも素晴らしかった。
柴田、倉本の二遊間による併殺完成も流石プロという軽快さだった(が、どうやら現代の観客は単に併殺が取れればそれで満足のようだった。)
一方で、スタメンに名を連ねた佐野。オープン戦とはまるで違う一軍の投手に戸惑っているようにしか見えなかった。打つべき球を見逃し、打っては行けないボールに中途半端に手を出してしまう様は今は一軍には相応しくない、残念だった。恐らく近々にファーム行となるだろう。
また、石山はボールもバラついていたが指にかかるボールとそうでないボールもあり、力むとフォームもバラついていてどこか故障でもしているんじゃないかと心配になった。
次回、があればやはり神宮でのドラゴンズ戦を狙おう。
これ以外に日本でどこか比較的じっくり野球を見られる場所、カードはあるのだろうか…あるのであれば誰か教えて欲しい。
さようなら、横浜スタジアム。
