まだ少しぼーっとしていて、恥ずかしさで感覚が鈍っていたサラは、
エレンがしゃべっていることをよく聞いていませんでした。それでも
エレンのしゃべり方の何かが、サラをだんだんいい気持ちに
させてくれました。
他の人がきっかけでいい気持ちになった自分に気がつき、サラは
少し戸惑いました。他の人から言われた言葉の方が、自分ひとりで
静かに考えていることよりも気持ちがよかったなんて、本当に稀だった
のです。なんだか変な気がしました。
「ありがとう」とサラはつぶやいて、汚れたスカートから泥を払い落そうと
しました。「少し乾けば、汚れは目立たなくなるわ」とエレンは言いました。
今度もエレンの言った言葉そのものはどういうことはありません。
言葉はただの普通の言葉です。でも、エレンのしゃべり方の中に
何かがあったのです。
落ち着いてはっきししたエレンの声が、サラが感じていたショックと
心の痛みを優しくやわらげてくれるように感じられました。
ものすごく恥ずかしいという気持ちはすっかり消えて、
力が戻ってきて、いい気分になっていました。
サラとソロモン エスター&ジェリー・ヒックス 著 より引用
これは主人公サラの学校生活でのワンシーンです。
サラは始業のベルに遅れまいと急いで教室に戻る途中、
ロッカーの前で大きく滑って大の字になって倒れました。
しかも床は泥で汚れていたので服も髪も泥だらけ
体も打ちつけているので恥ずかしいやら痛いやら。
それを見ていた辺りの生徒たちはクスクス、あるいは大笑いです。
中にはひやかしていく男子生徒もいる始末です。
サラはいっそのことこのまま消えてなくなりたいと思うのでした。
そんな中サラに一本の手が差し伸べられました。
上級生のエレンという少女です。
サラはエレンに助けられました。
穴でもあったら入りたいほど恥ずかしかったサラが
エレンに救われたのです。
どこにでもよくある話で、どの立場であれ誰しも一度や二度は
同じような経験があるかと思います。
そしてここでサラが感じていたもの
それは
味わい愛でる
ということだと思われます。
普段はあまり使わない言葉かもしれません。
しかし知らず知らずのうちに使っていることがあります。
例えば子供さんがいらっしゃったらその子の寝顔を見る時
ペットをかわいがる時などと言えばピンとくるかもしれません。
言葉ではなくその想いのエネルギーと言えばいいのでしょうか。
言葉以上に大きな力を発揮します。
このあとサラは賢いフクロウ、ソロモンに出会い、
味わい愛でる
ということについてレクチャーを受けることになります。
とても大切な能力のひとつとして。