本作『マシニスト』は、暗く寒々とした雰囲気が特徴。見る者の皮膚の下にもぐり込み、いつまでも沈殿し続ける一編である。主演のクリスチャン・ベイルは、1年間も不眠に悩まされている工場労働者トレバー・レズニックに扮するため、28キロ以上の危険な減量を断行する入れ込みよう。もはや“断食アーティスト”とでも呼びたいほどの痩せっぷりだ。ナゾめいた出来事が次々と降りかかり、誇大妄想に取りつかれるようになったトレバーは、無味乾燥な現実と悪夢的な幻想の境目を夢遊病者のようにさまよう。不安定な精神状態のために骨と皮ばかりの痛々しい姿となり、一向に体重が増えないトレバー。本作でのベイルは、誇張でなく、ナチの収容所の解放を報じた古いニュース映画に出てくるようなホロコーストの生存者に酷似している。監督のブラッド・アンダーソンは、1998年のロマンティック・コメディ『ワンダーランド駅で』とはガラリと変わった映画的領域に足を踏み入れ、色あせた青と灰色を駆使して、くすんだ夜の世界を演出。その中で、トレバーは悪戦苦闘しながら、みずからの精神的問題を解決するための手がかりを集めていく。彼の正気を支えてくれるのは、愛想のいい娼婦(ジェニファー・ジェイソン・リー)と空港のカフェで働くウェイトレス(アイタナ・サンチェス=ギヨン)だけ。トレバーの精神が限界に達し、崩壊寸前になったとき、彼の秘密が明らかになる…。電子楽器テルミンに彩られた音楽を聞きながら地獄への旅を体験するのが嫌でない人々にとって、本作『マシニスト』は、緊張感あふれるカルト・スリラーとして末長く支持できる作品になりそうだ。amazon
アンデス山脈にある前人未到のシウラ・グランデ峰登頂に挑んだジョーとサイモン。しかし天候の悪化によって、ジョーが片足を骨折する。サイモンは、2人とも命を落とすか、あるいは動ける自分だけが助かるべきかで悩み、ジョーとの命綱であるザイルを切る選択に迫られる。実話を基にしたノンフィクション文学のベストセラーを、ドキュメンタリーかと見紛うような映像で再現した一作。
実際にアンデスやアルプスでロケが行われ、大自然のスケール感や恐怖が伝わってくる。とくに夜の雪嵐や、氷の割れ目であるクレバス内部の映像、雪に覆われた絶壁に豆粒のように貼りついた人間という遠景が圧巻だ。体感温度マイナス60度の過酷な状況下で凍傷が悪化していく過程も、これまでの雪山映画では表現しきれなかったリアル感が際立つ。劇中には、実際にモデルとなった人物も登場し、当時の様子を生々しく告白。究極の選択を迫られたサイモンの苦しみが観る者の胸に迫る。生死ギリギリの精神状態を映像化したシーンはやや冗長だが、そのとめどない時間の感覚も当事者にとっては現実だったのだろう。amazon
『許されざる者』は“私がウエスタン映画について思っていたこと全てを要約した”現代の古典作品だ、と監督/ 主演のクリント・イーストウッドはかつてthe Los Angeles Times紙上でこう語った。アメリカ映画協会の選出したアメリカ映画ベスト-100に名を連ね、1992年のアカデミー賞(R)では作品賞、監督賞、助演男優賞(ジーン・ハックマン)、編集賞(ジョエル・コックス)を含む4部門を受賞。イーストウッドとモーガン・フリーマン演じる元アウトローのコンビは、その手に再び銃を持ち、最後の追跡の旅に出る。リチャード・ハリスは名の知れた殺し屋を、ジーン・ハックマンは如才ない魅力…そして残忍さを併せ持つ保安官を好演した。『許されざる者』こそが“我々の世代を代表するウエスタンである。amazon
『サンダーアーム 龍兄虎弟』の続編で、秘宝を探す冒険家“アジアの鷹”ことジャッキー・チェンが、インディ・ジョーンズ張りのアクロバット秘境アクションを披露してくれる、自作自演のエンタテインメント大活劇。
舞台もアフリカのジャングルからモロッコの砂漠、そして洞窟内に隠された莫大な黄金の争奪戦と、行き着く間もないアクション場面が繰り広げられていく。特に砂漠のシーンは、ハリウッド製の砂漠冒険劇の要素をも巧みに盛り込みながら卓抜した展開を見せてくれており、ジャッキーの映画への勉強熱心さも多いにうかがえる内容となっている。日本から池田昌子が参加し、ドゥドゥ・チェンらとともにヒロインのひとりに扮しているのもお楽しみ。amazon
ジャッキーの人気を確立した名作『プロジェクト A』の続編。水上・陸上警察が、政府に反抗する暗黒街のボスと戦う痛快香港アクション。
サモ・ハンやユン・ピョウは他の撮影があったため出演しておらず、ストーリー的にも前作とあまりつながりはない。しかし今作には、前作に負けず劣らずの大技スタントも多々有り、「これぞジャッキー映画!」と思わず膝を叩いてしまうような痛快アクション・シーンのオンパレードだ。特にラストの、倒れる巨大看板の天辺から滑り降りるシーンは圧巻。また今作では、敵の投げ飛ばしぶりがかなり豪快だ。スタントチームも、よく無事でいれるものだと感心してしまう。まだ垢抜けていないマギー・チャンも初々しい。彼女が妙な広東オペラを歌うシーンも見どころ。amazon




