チェンジ・ザ・ワールド・ツアーのBGM テツロウ | スムルース オフィシャルブログ Powered by Ameba

チェンジ・ザ・ワールド・ツアーのBGM テツロウ

チェンジ・ザ・ワールド・ツアーの開演前に会場内で流していたBGMについて、ライブスタッフからファンの方までやたらみんなが気になっていたようなので、ここでご紹介することにします。という、今日は僕にはめずらしくまともで長い(長すぎる)記事です。

今回のツアーは2007年から2008年にかけて年をまたいで行われたわけだけれど、じつは年明けまえとあとで開演前のBGMを変えております。まず2007年に行った京都公演から仙台公演までの10箇所では、クリスマスシーズンということでザ・ビートマス(THE BEATMAS)の『クリスマス!XMAS!)』というアルバムを流しました。

これはクリスマススタンダードナンバーを、全曲ビートルズナンバーのパロディーアレンジで演奏したという名盤です。どういうことか簡単に説明すると、たとえばイントロを聴いた瞬間は完全にビートルズナンバーなんだけれど、絶妙な展開とアレンジ法でそれを裏切り、つぎの瞬間にはお馴染みのクリスマスナンバーが始まるのです。NHK教育の名番組「ハッチポッチステーション」のなかでグッチ裕三がロックナンバーと日本の童謡を融合したものを歌うという名コーナーがあったけれど(僕はあのコーナーが大好きでした)、だいたいそんな感じです。とにかくその融合のさせ方が秀逸で、各地のライブハウスのスタッフさんも何度か「これは誰ですか」と食いつく人気ぶりでした。たしかにビートルズ好きであれば反応せずにはいられません。ただ元ネタであるビートルズの曲を知らないと、このアルバムはただのポップでロックなクリスマススタンダードナンバーオムニバスでしかありません。

ネット上で試聴できるし、入手も可能みたいなので、ビートルズ好きのクリスマス好きならば買って損はない一枚です。

そうやってツアーをまわりながら、じつはずっと「いったい年が明けてからのBGMはどうするんだ」と頭を抱えておりました。ビートマスが好評であればあるほど、その悩みは深刻になるばかりでした。

名古屋公演の直前になって、僕が思いついたのが東京ビートルズの『meet the 東京ビートルズ』でした。これは全世界および日本にビートルズ旋風が吹き荒れる1964年当時、それにあやかり東京ビートルズというグループを結成、ビートルズの大ヒットナンバーを日本語訳詞によってカバーしてしまったという幻の音源をCD化したものです。

つまり、ビートマスからの“ビートルズもどき”つながりです。

この音源はとにかく素晴らしいです。なにがって、ロックをジャズで消化してしまったアレンジが素晴らしい。ロックとはほど遠い日本人らしい歌いまわしや横文字歌詞のカタカナ発音が素晴らしい。訳詞のセンスが素晴らしい。ジャケットや歌詞カードで見られる、マジックで「東京ビートルズ」と手書きしただけの白Tシャツに白タイツという衣装が素晴らしい。本家ビートルズとの仲むつまじい対面写真が載っていると思いきや、じっさいそのバンドはビートルズとはなんの関係もないイギリスのバンドなのが素晴らしい。とにかく、イカイカ ということです。

こちらもネット上で試聴可能、入手可能のようなので、是非ともこのイカイカっぷりを体験してもらいたい珠玉の一枚です。

ただ、よくよく考えてみると僕たちにはビートルズもどきつながりというそのチョイスの意味が理解できても、東名阪の公演を観にきたひとにとって(すでにそのまえの10公演のどれかに参加していて、さらにそのときのBGMがビートルズのパロディであることを理解しているひとでなければ)それはただのイカイカなBGMで終わってしまいます。あえてそこに意味を持たせる必要もないのでべつにそれでもいいのだけれど、2007年の公演ではクリスマスソングという意味と必然性を持ったBGMだったので、せっかくなら2008年の公演も同じようにきちんと意味を込めたものにしたいと思い、ほかのパターンも考えてみることにしました。

そこで思いついたのが、年明け⇒子年⇒ねずみ⇒ミッキーマウスということで、ミッキーマウスソングオンパレードでした。ここで重要なのは“ディズニー”ソングではダメだということです。“ミッキー”ソングでなければ年明けの意味を持たないし、必然性がなくなってしまうからです。これが意外に難しい条件で、ディズニーソングとなれば本当にたくさんの数があるのだけれど、そのなかでミッキーをテーマにした歌の、さらに聴いただけでそれがミッキーの歌だとわかってもらえるものを集めるのには苦労しました。ついでにミッキーとミニーが新年の挨拶をする会話なんかも挟み込んでおきました。

そうやって2008年公演用には2種類のBGMを用意したのだけれど、メンバーと舞台監督さんでどちらにするか相談した結果、両方面白いから両方使おうという結論になり、じっさい、ミッキーと東京ビートルズの両方が会場内に流れました。そんなバンドでごめんなさい。

ちなみに、終演後すぐに流していた切なくて素敵なBGMはスモーキーロビンソン&ミラクルズ(Smokey Robinson & The Miracles)の「ウー・ベイビー・ベイビー(Ooo Baby Baby)」という曲です。デビューしてからのツアーではほぼすべての公演で終演後にこの曲を流していますが、ほんの数回だけバーバラ・ルイス(Barbara Lewis)の「ベイビー・アイム・ユアーズ(Baby I’m Yours)」を流したことがあります。今回のツアーではたしか京都公演のときがバーバラのほうだったと思います。
どちらもいつ聴いても、何度聴いても、涙がでてしまいそうになる僕の大好きな曲です。