花帰葬

トリトリ←隊長、にしてみたいんですがそこまでいかず、
「←」というよりは銀朱さんただの傍観者というか、むしろストーリーテラーにすぎないというか。

 
 
 
 
 
 
 



初めて彼の人を目にしたのは、父の跡を継ぐべく第三兵団に入隊したばかりのころだったか。

うつくしい、と思った。それだけだ。
母が身に着ける装飾品を見たときの感想に近い。
生を感じない、造り物めいたうつくしさだ。


    * * *


銀朱が歩む窓の少ない薄暗い回廊は、白い羽根をもつ預言者がおられる広間へと続いている。
「まさに、籠の中の鳥だな」ただ預言者は、自ら望んで籠にとどまっているような。時折、そんな素振りをみせる。
大抵は、美しい細工物のように、感情を露わにする事など、全くなかった。
冷酷、なのではない。彼の人の言は常に優しく、聞く者の耳に心地よい。けれども、銀朱が白梟に持つ印象は、白く澱んだまま不変の美しさを保ち続ける、月長石のようだと変わらぬままであった。

広間の入口に差し掛かり、膝をついて頭を垂れる。拝謁を請おうとして、常と異なる気配に銀朱は思わず、剣の柄に手をかけた。

「銀朱です」
硬い声で名乗る。応えは、ややあってからきた。
「…お入り下さい」
立ち上がり剣から手を放す。気配は既に消えていた。

「お呼びと伺いましたが、白梟と…」
真っ直ぐ上座に歩もうとして、その先に姿のないことに銀朱は一瞬うろたえた。
人を呼ぼうと振り返ろうとして、ようやく窓辺に佇む白梟を見つけた。
「白梟殿!」
思わず荒げてしまった銀朱の声に、白梟は
「…ああ、銀朱隊長ですか」


いったい、なんとしたことだろう。
頬には朱の残痕、眦には気だるさを浮かべ、その唇から零れるのは未来を紡ぐ詞ではなく淡い吐息。
吹き込む風に、羽織る薄物がさらりと音をたてた。
「…し、ろふくろうどの…」
壮絶といっても過言ではない艶に呑まれ、銀朱の声も掠れる。


白梟は静かに瞼を閉じる。そうして三つばかり数える間に、ふ、と口角に笑みを刷いた。
「さて、銀朱隊長」
次に瞳を上げたときには、いつもの預言者の顔に戻っていた。
「どうぞ、こちらを見てください」
しなやかな指が銀朱を導く。示されて銀朱は、卓上の水鏡を覗き込んだ。

「これは…!」


    * * *



窓辺に残されたのは、風に舞う花のように白い雪と、一枚の黒い羽。