正義感とか倫理観など、人間が社会生活を送るには大切な事で我々はそれを精神的土台にして生活している。
ただ正義感は時に刃物のように鋭利になって自分も周りも傷つけてしまう。
今日はそんな話です。
大学時代にA君とBちゃんのカップルがいた。俺はその2人とは良く一緒につるんでいて、歳上だったA君からは弟みたいに扱われ同い年だったBちゃんとは兄妹の様に仲が良かった。
特にBちゃんはクラブで遊ぶのが好きだったから良く2人で飲み明かす事も多かった。
少し早めの雪が降ったある日、Bちゃんの家で飲んでる時に突然彼女の表情は強張りこう言った。
「ねえ、A君ってさ浮気してるでしょ。」
俺は知っていた。その1ヶ月ほど前にA君の浮気相手が働いているお店に連れて行かれ、A君にその事を告げられていたのだ。
ゴクリと唾を飲み込むも、一瞬で口が乾いて空気を飲んでいた。事実を言ったらどうなる?と自問自答に身体中のブドウ糖が脳に使われ、目眩をしながらも答えた。「うん、してるよ。」と。
Bちゃんはほぼ確証がありつつも俺にその事を問いていたのか、安心したような悲しいような何とも言えない表情をしていた。
そうして2人は別れた。でも2人には巻き込んで悪かったと謝られた。
しかしA君の取り巻きの後輩や友人には「なんで言ったんだ」「空気読んでくださいよ」など責められた。
彼らからは口が軽くてヤバいやつとレッテルを貼られた。
Bちゃんが好きだったから別れさせたくて言ったとかじゃないんだ。
彼らが別れる数ヶ月前にBちゃんの親友であるCが亡くなった。自死だった。
Bちゃんも俺も一週間は泣いていたと思う。前の日まで一緒に試験勉強してたのにね。
今でも夏祭りの掛け声を聴くとあの日の事を思い出す。
葬式の後、Cの母親は烈火の如くBちゃんを責めた。何故娘を守ってやらなかったのかと。
A君はそれから庇ってあげていた。
それを見ていた俺はA君がいればBちゃんはしっかり立ち直れると思った。
でも浮気相手のお店に連れて行かれた後はずっとモヤモヤしていて感情の整理が付かず悩んでいた。
A君もBちゃんも大事な友人だ。だけどA君がBちゃん裏切ってまた悲しい思いをさせるのかと。
誰がBちゃん支えてやるんだよ!
沸々と自分の中に正義が出て来た。多分、間違ってない。だからBちゃんに白状したんだ。
ヤベーやつ。
理解されない正義もあるんだなってこの時初めて感じた。みんなが称賛する正義はこの世には存在はしない。絶対悪があればこそだけど、テロリスト級の悪人には普通の生活じゃ会わないものね。
でも今また正義が出てきた。感情の炎が心臓から飛び出して来そうなのを飲み込んで、そのせいで喉が焼けている。
結局誰かを陥れてしまいたいとか私怨だったりもするのだろうか?何も事を荒立てずに過ごすのが一番だとは思わないのか。
悩みながら今日も胃薬を飲むのでした。