愛媛県今治市でピアノ教師の女性が殺害され、女性の次女への暴行の疑いで男が逮捕されました。
事件当日の防犯カメラの映像を専門家とともに分析します。
住宅街を黒い服を着た男女が足早に歩いていきます。男は特徴的な赤いスニーカー。別のカメラには男が女性のひじをつかみながら、話し掛ける様子も。
撮影されたのは、まさに事件の当日でした。
今治市で26日、ピアノ教室を経営する冨田小雪さん(64)が自宅で首を切られ、殺害された事件。犯人は逃走、冨田さんの次女も当初から連絡が取れなくなっていました。
防犯カメラ映像は、現場のすぐ近くで撮られたもの。映る男女は冨田さんの次女と次女に暴行した疑いで逮捕された榊原正道容疑者(34)とみられています。
撮影されたのは事件当日の午後5時すぎ。そのわずか1時間後には「首を切られた女性が倒れている」と110番通報が。この映像が事件発覚直前だったことが分かります。
事件翌日の夜、愛媛県西条市内で警察は次女を発見し、無事保護しました。そしてその後、同じ市内で警察は榊原容疑者を見つけたということです。
警察によると、逮捕された榊原容疑者は次女の腕を引っ張ったり、体を抱え込んだりしたということです。
防犯カメラの映像を見た元埼玉県警の佐々木成三さんは。
元埼玉県警 捜査1課 佐々木成三氏 「動画上ではかなり強力的な自由を拘束するという行動は、あの行動からは見られない。ただ物理的な拘束なのか、精神的な拘束なのか、動画では判断できないと思う」 また、2人は保護されるまでずっと行動をともにしていたとみられるということです。
次女 「別れたいが、別れられずに困っている」 次女と榊原容疑者の間には以前からトラブルがあったことが分かりました。
歌声を披露するのは殺害された冨田小雪さんです。ピアノ教師の傍ら合唱の指導を行っていたといいます。 子どもをピアノ教室に通わせていた人 「びっくりしました。いつもニコニコしている良いイメージがありました」 「(Q.トラブルとかも聞いたことはない?)全然ないです」 警察によると、冨田さんは35歳の次女とその2人の子どもと一緒に住んでいて、次女と榊原容疑者は以前、交際関係にあったといいます。
去年11月には次女自らが警察署を訪れ、「別れたいが別れられずに困っている。髪を引っ張られるなどの暴行を受けている」などと相談していたことが分かりました。
ただ当時、次女は榊原容疑者への警告や処罰は望んでおらず、警察では防犯指導などにとどめたということです。 榊原容疑者宅の近所に住む人 「普段、あいさつはしない。おとなしいような…。夜出ていくことが多いイメージ」 29日午後、送検された榊原容疑者。次女への暴行について「したと思います」と容疑を認めています。
そんな榊原容疑者だが、NEWSポストセブンの取材で2013年にも、女性に対し同様の傷害事件を起こし、逮捕されていたことがわかった。
取材に応じたA子さんによると、東京で出会い交際していた際に、複数回暴行を受けていたという。
当時の様子について、A子さんが語る。 「ニュースで名前と顔を見て、当時のことがフラッシュバックして動悸が止まらなくなりました。私も交際していた当時、顔が変形するほどの暴行を受けていました。逮捕された後もトラウマに悩まされていましたが、とうとうこんな事件が起きてしまったのかと、今は信じられない気持ちです」(A子さん、以下同)
A子さんは当時、池袋の路上で榊原容疑者から声をかけられ、交際に至ったという。 「榊原は当時、ホストをしていました。『俺は家族に捨てられて孤児院で育った』と話していて、交際するうちに『彼には私しかいないんだ』という、ある種“洗脳”に近いような形で感情移入してしまいました。最初は普通に交際していたんですが、ある時『A子と一緒に住むためにお金を貯める』と言われて、2人で毎日ホテルや漫画喫茶に寝泊まりするようになりました。私がキャバクラで稼いだお金も、全て彼に渡すようにしていました」
この頃から、榊原容疑者の暴行が始まったという。 「顔や身体を殴られるのは当たり前でした。タバコで肌に根性焼きをされたり、ナイフを突きつけられたり、首を絞められ気を失うこともありました。いっときは顔が変形してお岩さんのように腫れ上がり、鼻骨も折れてしまった。 『お前はもっと痩せろ』と言われ、春雨スープかヨーグルトを選ばされ、それが1日の食事でした。家族や友達にも会えず限界を感じて一度逃げ出したのですが、すぐに捕まってしまい、その時に『次逃げようとしたら、お前の親もペットも殺す」と言われました
両親は枕元に包丁を置いて…
その後、「仕事前に一度だけ家に寄る」と許可をとって家に帰ると、異変に気づいた両親がA子さんを保護し、警察に通報したという。その後、榊原容疑者は傷害容疑で逮捕された。
「鼻が折れ、アザだらけになった私の顔を見る両親の表情が忘れられません。その後、警察が来て、彼には前科があったせいか、すぐにパソコンで『この男?』と顔写真を見せられました。
事情聴取を受けている間、何かを察したのか彼から『お前は俺を捨てないよね?』とメールが来ていましたが、何も返すことができず、その晩に彼は逮捕された。ただその後も、彼が『お前のせいで逮捕された』と復讐に来るのが怖くて……。両親は私を守るために、枕元に包丁を置いて寝ていました。
今回、ニュースでこの事件を知り、自分と重ね合わせてしまう点が多くありました。今回の事件で亡くなられたお母様も、私の母親のように娘を守ろうとしていたのかなと思うと、あまりに胸が苦しいです」 冨田さんの次女は榊原容疑者と交際関係にあったとされる。冨田さんは、容疑者から次女を守ろうとしたのだろうか……真相究明が待たれる。