[2022/04/08]公益財団法人サントリー芸術財団はこのほど、東京都内で理事会を開き、第53回サントリー音楽賞を濱田に授与すると決定した。賞金は700万円。

濱田は東京生まれ、60才。桐朋学園大古楽器科卒業後、スイスのバーゼル・スコラ・カントールム卒。東洋音大(現・東京音大)の創立者を曾祖父に持つ。主な受賞歴は、2005年第7回ホテルオークラ音楽賞、2019年第6回JASRAC音楽文化賞、2020年 第50回ENEOS音楽賞 洋楽部門 奨励賞など。

なお審査は、岡田暁生、片山杜秀、白石美雪、長木誠司、沼野雄司、舩木篤也、松平あかね が担当した。

贈賞理由は次の通り。
(同財団公式サイトから引用)

中世からバロック初期までのヨーロッパ音楽は、絶えず外部世界との関係をさまざまな移動の中で保ちながら聖と俗、社会の上下、国や地域といった狭間で変容しつづけていた。濱田芳通が創る音楽は、そうした時代の姿を映し出す。天正少年使節がもたらした音楽に日本の現在の音楽の源流を探り、ペルーに赴任した司教による採譜から南米音楽のルーツを探ることで、音楽のダイナミックな変成と流転の姿をとらえようとする。ヨーロッパ音楽へのグローバルな視点は、豊かな知識に裏付けられながらも、そこから実演へと飛翔する際には最大限の想像力が駆使され、また影響関係のあらゆるネットワークを知悉しながらの思い切った即興性や、一見異分子的な要素の突き合わせが行われる。それによって当時の音楽が思いもよらぬ生々しさと共にせまってくる。
卓越したリコーダー奏者、コルネット奏者でもある濱田は、同様の生々しさを自身の演奏によるヤコブ・ファン・エイクの《笛の楽園》における、愉悦に満ちながらも超絶的な技術の披瀝によっても、より直接的な感覚に訴えて追求しているが、近年のバロック・オペラ上演では、楽譜から得られるあらゆる情報や、楽譜を超えた情報を取り込み、その生まれた時代の想像される環境に作品をふたたび置くことによって、そこに新たな生命力を吹き込み、新鮮な感動を与え続けている。その大胆な演奏形態は世界的な視野で見ても画期的である。2021年に採り上げた《メサイア》では、楽譜資料への深い洞察を踏まえながら、最小限の精鋭アンサンブルと合唱を用いて響きの上でも特筆すべき斬新さを打ち出し、機動性と柔軟性の両面に秀で、即興性、意外性に富んだ驚くべき演奏を披露した。作曲当時の上演習慣に則り、あくまでも作品の核心を突きながらも現代的な感覚での自在を見せ、これまで耳にしたことのない、現代に奔放に息づくバロック世界を創り上げた。それは本賞にふさわしい成果をあげたと評価できる。(長木誠司委員)