【Arne Jacobsen】
(1902~1971)
世界を魅了し続ける、時間を超越した、デザインの原型。
20世紀という名の巨大な白いキャンバスに、未来という名の夢を描き続けた、アルネ・ヤコブセン。建築やインテリアに造詣を持つものならば、その名は深く刻まれていることでしょう。1902年、コペンハーゲンのユダヤ系家庭に生まれ、幼少期には、ビクトリア様式の家具に囲まれて育った彼が、親に黙って自室のデコラクティブな壁紙を真っ白に塗り替えてしまったというエピソードがあります。シンプルな美に対する強い共鳴が、すでに、早熟な少年の心に芽生えていたのでしょう。画家か彫刻家を夢見ながら、父親の勧めで、最終的に「どちらの要素も含んでいる」建築家を志しました。24年、デンマーク王立美術アカデミーの建築科に入学したヤコブセンの心をとらえたのは、当時一世を風靡していたバウハウス、ミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジェといった異才の眩いばかりの活躍でした。デザインの世紀と呼ばれるその刺激的な環境の中、その才能は開花していったのです。
頑固者だったとされる、生前のアルネ・ヤコブセン。彼は、建物を完璧につくっても、その内部空間に、趣味やコンセプトの異なるモノが在ることに、妥協しませんでした。そんな頑なさが、かの有名なアントチェアをはじめ、時計、食器、カーテンといった、既成の枠組みにとらわれない多岐にわたる、膨大なプロダクツを生み出したのです。デンマーク国立銀行設計時にデザインされ、Volaシリーズとして1969年に発表された水栓もまた、そうした思いを込めた、彼の作品です。単純に曲げられた一本の美しいパイプとその中を流れる水、それ以外の余計な要素を排除した形。新しさとか古さを感じることすらできない。まさに時間を超越したデザインの原型です。教会装飾の鋳物メーカーとして1873年に創業。1955年に水栓金具の専門メーカーとしてスタートしたVola社が、1968年、アクセサリーを加えて発売したボラシリーズは、以来36年間そのシンプルなスタイルが世界で評価され続け、各国の美術館コレクションに選ばれています。
→彼もまたミッドセンチュリーを代表するDesignerの一人。その妥協のなさ、こだわり、空間プロデュース。すべてが逸脱です。
