rihabiri7 | Third Place

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僕が暗闇の中で壁についたスイッチを押すと、何秒かの時間をおいて天井の蛍光灯がカチカチとまたたき、その白い光が倉庫の中に溢れた。蛍光灯は全部で百本はあるだろう。倉庫は外から見た感じよりずっと広かったが、それでもその光の量は圧倒的だった。まぶしさで僕は目を閉じた。しばらく後で目を開けたときにはやみは消えて、沈黙と冷ややかさだけが残っていた。

 倉庫は巨大な冷蔵庫の内部のようにメタが、建物の本来の目的を科が得てみればそれは当然のことともいえた。窓ひとつない壁と天井は艶のある白い塗料で塗られていたが、黄色や黒や、その他のわけの分からぬ色のしみが一面にこびりついていた。壁がおそろしく分厚く作られていることは人目でわかった。まるで鉛の箱に詰め込まれたような気がする。営業第1部絵インにっこから出られないのではないかときう恐怖が僕を捕らえ、何度も後ろの扉を振り返らせる。これほど人を嫌な気分にさせる建物もまたとはあるまい。

 ごく好意的に見れば、それh象の墓場のようにも見えた。そして足を折り曲げた象の白骨のかわりには、見渡す限りのピンボール台がコンクリートの床にずらりと並んでいた。僕は会談の上に立ち、その異様な光景をじっと見下ろした。手が無意識に口元を這い、そしてまたポケットに戻った。

 恐ろしい数のピンボールだいだ。七十八というのがその正確な数字だった。僕は時間をかけて何度もピン簿r-る台を感情してみた。七十八、間違いない。台は同じ向きに八列の縦隊を組、倉庫のつきあたりの壁まで並んでいた。まるでチョークで床に線を日いい手並べでもしたように、その列には一センチの狂いもない。アクリル樹脂の中で固められたハエのようにあたりの全ては静止していた。何ひとつびくりとも動かない。七十八の死と七十八の沈黙。僕は反射的に体を動かした。そうでもしなければ僕までもがそのがー語いるの群に組み込まれてしまいそうな気がしたからだ。

 寒い。そしてやはり死んだ鶏の匂いがする。

 僕はゆっくりと五段ばかりの狭いコンクリートの階段を下りた。階段のしたはもっと寒い。それでも汗が出た。嫌な汗だ。僕はポケットからハンカチを出して汗をぬぐう。ただ、わきの下にたまった汗だけはどうしようもない。僕は会談の一番下に腰をおろし、振りえる手で煙草をすった。・・・・3フリッパーのスペースシップ、僕はこんな風に彼女と会いたくはなかった。彼女にしたところでそうだろう・・おそらく。

 扉を閉めてしまった後には虫の声ひとつ聴こえない。完璧な沈黙が重いきりのように地表によどんでいた。七十八台のピンボールマシーンは三百十二本の足をしっかりと床に下ろし、その行き場の無い重みにじっと耐えていた。哀しい風景だった。

 僕は腰を下ろしたまま「ジャンピング・ウィズ・シンフォニーシッド」のはじめのヨン小説を口笛で吹いてみた。

スタンゲッツとヘッドしぇ位キング&フットタッピングリズムセクション・・・・。遮るものひとつない伽藍とした冷蔵倉庫に、口笛は素晴らしくキレイに鳴り響いた。僕は少し気をよくして次の四小節を吹いた。そしてまた四小説。あらゆるものが聞き耳を立てているような気がした。もちろん誰も首を振らないし、誰も足を踏み鳴らさない。ただ、それは僕の奥底の舞台でなり続けているだけだった。