rihabiri5 | Third Place

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三日ばかり風邪で休んだおかげで仕事は山のようにたまっていた。口の中はざらざらするし、体中に紙やすりをかけられたような気分だ。パンフレットや書類や小冊子や雑誌が僕の机のまわりにありづかのように積み上げられていた。

共同経営者がやってきて、僕に向かってもごもごと見舞いらしきことを言ってから自分の部屋に戻っていった。ジムの女の子はいつものように暑いコーヒーとロールパンを二個机の上に置くと姿を消した。煙草を買い忘れたので共同経営者からセブンスターを二箱もらい、フィルターをちぎりとって反対側に火をつけて吸った。空はぼんやりと曇り、どこまでが空気でどこからが雲なのか見分けもつかない。あたりにはまるで湿った落ち葉をむりやり焼き付けたような匂いがする。あるいはそれも熱のせいかもしれない。

 僕は深呼吸してから一番手前の蟻塚を崩しにかかった。全部に「至急」というゴム印が押され、その下には赤いフェルト・ペンで期限が書き込まれていた。幸いなことに「至急」蟻塚はそれひとつきりだった。そしてもっと幸いなことには2、3日中というものもない。一週間から二週間といった期限付きのものばかりで、半分を下訳に回せばうまくかたは付きそうだった。

僕は一冊ずつを手に取り、片付ける順序に本を積み替えてみた。おかげで蟻塚は前よりずっと不安定な形になった。新聞の一面に載っている性別年齢別の内閣支持率のグラフのような形である。そして形だけでなく、その内容たるや実に心を踊る取り合わせだった。