中国が恐れる「指南書」 世界で民主化運動を触発
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO88269030Z10C15A6000000/
中国の国有出版社が昨年、米マサチューセッツ大学名誉教授ジーン・シャープ氏の著書『独裁体制から民主主義へ』の中国語翻訳権の獲得について、ボストンのアルバート・アインシュタイン研究所に照会した。世界中で民主化運動を触発してきた本である。
中国共産党が実権を握る出版社が、なぜこんな照会をしたのか。折しも香港で、何万人もの市民が民主化を訴える抗議運動を繰り広げたばかりだった。
■雨傘運動を触発した手引書
選挙制度改革法案否決を受け、親民主派の弁護士や議員を含むデモ参加者が気勢を上げる(18日、香港)
アインシュタイン研究所の創設者であるシャープ教授は、非暴力による社会運動の研究家で、1990年代初頭に『独裁体制から民主主義へ』を著した。この本はミャンマー、セルビア、シリアなど世界中の国々で抗議運動の手引書として使われている。
アインシュタイン研究所のジャミラ・ラキーブ主席研究員は、くだんの国有出版社に中国語版を出版する意図はなく、ただ出版権を押さえて他社が出せないようにすることを考えたのだろうとみている。
中国共産党指導部が87歳のシャープ教授を恐れるのには、それなりの理由がある。香港の中心部を占拠して民主化を訴える「雨傘運動」を触発したのも、シャープ教授の教えだった。雨傘運動のリーダーたち自身が、シャープ教授の本を手引書代わりにしたと語っている。
その彼らが昨日、ひとつの勝利を宣言した。中国政府から最終案として突きつけられていた選挙制度改革案に対し、香港立法会(議会)の民主派議員が結束して否決に持ち込んだのだ。
この改革案は、2017年の次期香港行政長官選挙で500万人の香港有権者に一人一票の普通選挙を認める内容だった。ただし、中国政府は事前に候補者をふるいにかける権利を手放そうとしなかった。民主化勢力が「ニセ民主主義」と呼んだ状態だ。
改革案の否決を受けて、中国政府は失望感を表明した。しかし、雨傘運動は香港統治の脅威にならないという中国政府の確信は揺らいでいない。
自 信のひとつの理由として、“FDTD”(『独裁体制から民主主義へ』の英語表題の頭文字)を手本にしていようとも、雨傘運動は同書の説く効果的な抗議運動 から外れている。1989年の北京・天安門広場での抗議行動と同じく、雨傘運動も学生主体の無秩序な社会運動にすぎず、効果的な指揮系統と戦略的ビジョン を欠いている。
人民解放軍の介入で流血の大惨事に終わった天安門事件について、シャープ教授は「学生たちには何の計画もなかった」と言う。「最初 から最後まで、場当たり的に動いただけだった。状況に応じて動いたほうがうまくいくという考え方は意味をなさない。自分たちは何をするのか、それがわかっ ていなければ、ひどいことになってしまうはずだ」
雨傘運動が天安門事件のような事態に発展する恐れは、もとよりなかった。しかし雨傘運動は、26 年前の北京の学生たちと通じる戦術的ミスを犯した。昨年、香港中心部の幹線道路を封鎖し続けたことで、重要な「支持の柱」になる人々に離反を引き起こして しまった。日常生活を乱された中間層の勤め人や商店主、タクシー運転手などだ。
中国政府が今後に期待しているのは、来年の香港立法会選挙におい て、不完全ながらも進歩となる選挙制度改革案を否決した民主派議員が罰せられることだ。民主派が相当数の議席を失えば、昨日否決された改革案を再び採決に かけて成立させ、17年の香港長官選挙に間に合わせることも可能になる。
■本を恐れる本当の理由
天安門事件から26年。現場となった天安門では私服警官が目を光らせていた
しかし、香港については自信をもつ中国政府も、シャープ教授に触発された抗議運動が本土に波及するリスクには万全の構えを取っている。
香 港立法会の建物から北へちょうど180キロメートル、広東省広州市の裁判所で19日、ほとんど無名の反政府活動家3人が「国家転覆を扇動」したとして裁か れる。有罪になれば最高15年の懲役が科される。検察側によれば、3人は「重大な政治的誤り」が含まれた書籍を配布した。その書籍には『独裁体制から民主 主義へ』も含まれている。
同様の事例で今年3月、「国際女性デー」に合わせて公共交通機関でのセクハラ防止などを訴えようとしたとして、女性活動家5人が公安当局に身柄を拘束された。5人とも後に釈放されたが、活動を続ければ再逮捕すると脅された。
シャープ教授は、中国政府がこの種の取り締まりに走っていることが物語るところは大きいと言う。「(中国指導部が)恐れていないのなら、これほどささいなことにまで目を光らせる必要があるだろうか」
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そんなものがあるのですね。覚えておきましょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO88269030Z10C15A6000000/
中国の国有出版社が昨年、米マサチューセッツ大学名誉教授ジーン・シャープ氏の著書『独裁体制から民主主義へ』の中国語翻訳権の獲得について、ボストンのアルバート・アインシュタイン研究所に照会した。世界中で民主化運動を触発してきた本である。
中国共産党が実権を握る出版社が、なぜこんな照会をしたのか。折しも香港で、何万人もの市民が民主化を訴える抗議運動を繰り広げたばかりだった。
■雨傘運動を触発した手引書
選挙制度改革法案否決を受け、親民主派の弁護士や議員を含むデモ参加者が気勢を上げる(18日、香港)
アインシュタイン研究所の創設者であるシャープ教授は、非暴力による社会運動の研究家で、1990年代初頭に『独裁体制から民主主義へ』を著した。この本はミャンマー、セルビア、シリアなど世界中の国々で抗議運動の手引書として使われている。
アインシュタイン研究所のジャミラ・ラキーブ主席研究員は、くだんの国有出版社に中国語版を出版する意図はなく、ただ出版権を押さえて他社が出せないようにすることを考えたのだろうとみている。
中国共産党指導部が87歳のシャープ教授を恐れるのには、それなりの理由がある。香港の中心部を占拠して民主化を訴える「雨傘運動」を触発したのも、シャープ教授の教えだった。雨傘運動のリーダーたち自身が、シャープ教授の本を手引書代わりにしたと語っている。
その彼らが昨日、ひとつの勝利を宣言した。中国政府から最終案として突きつけられていた選挙制度改革案に対し、香港立法会(議会)の民主派議員が結束して否決に持ち込んだのだ。
この改革案は、2017年の次期香港行政長官選挙で500万人の香港有権者に一人一票の普通選挙を認める内容だった。ただし、中国政府は事前に候補者をふるいにかける権利を手放そうとしなかった。民主化勢力が「ニセ民主主義」と呼んだ状態だ。
改革案の否決を受けて、中国政府は失望感を表明した。しかし、雨傘運動は香港統治の脅威にならないという中国政府の確信は揺らいでいない。
自 信のひとつの理由として、“FDTD”(『独裁体制から民主主義へ』の英語表題の頭文字)を手本にしていようとも、雨傘運動は同書の説く効果的な抗議運動 から外れている。1989年の北京・天安門広場での抗議行動と同じく、雨傘運動も学生主体の無秩序な社会運動にすぎず、効果的な指揮系統と戦略的ビジョン を欠いている。
人民解放軍の介入で流血の大惨事に終わった天安門事件について、シャープ教授は「学生たちには何の計画もなかった」と言う。「最初 から最後まで、場当たり的に動いただけだった。状況に応じて動いたほうがうまくいくという考え方は意味をなさない。自分たちは何をするのか、それがわかっ ていなければ、ひどいことになってしまうはずだ」
雨傘運動が天安門事件のような事態に発展する恐れは、もとよりなかった。しかし雨傘運動は、26 年前の北京の学生たちと通じる戦術的ミスを犯した。昨年、香港中心部の幹線道路を封鎖し続けたことで、重要な「支持の柱」になる人々に離反を引き起こして しまった。日常生活を乱された中間層の勤め人や商店主、タクシー運転手などだ。
中国政府が今後に期待しているのは、来年の香港立法会選挙におい て、不完全ながらも進歩となる選挙制度改革案を否決した民主派議員が罰せられることだ。民主派が相当数の議席を失えば、昨日否決された改革案を再び採決に かけて成立させ、17年の香港長官選挙に間に合わせることも可能になる。
■本を恐れる本当の理由
天安門事件から26年。現場となった天安門では私服警官が目を光らせていた
しかし、香港については自信をもつ中国政府も、シャープ教授に触発された抗議運動が本土に波及するリスクには万全の構えを取っている。
香 港立法会の建物から北へちょうど180キロメートル、広東省広州市の裁判所で19日、ほとんど無名の反政府活動家3人が「国家転覆を扇動」したとして裁か れる。有罪になれば最高15年の懲役が科される。検察側によれば、3人は「重大な政治的誤り」が含まれた書籍を配布した。その書籍には『独裁体制から民主 主義へ』も含まれている。
同様の事例で今年3月、「国際女性デー」に合わせて公共交通機関でのセクハラ防止などを訴えようとしたとして、女性活動家5人が公安当局に身柄を拘束された。5人とも後に釈放されたが、活動を続ければ再逮捕すると脅された。
シャープ教授は、中国政府がこの種の取り締まりに走っていることが物語るところは大きいと言う。「(中国指導部が)恐れていないのなら、これほどささいなことにまで目を光らせる必要があるだろうか」
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そんなものがあるのですね。覚えておきましょう。