「『君は笑うだろうか?』と先生は続けました」



小暮の眼をしっかりと見据えながら、

その口元に微笑を湛えながら、結木は言った。



「『そんな先の約束なんて出来ないと、

 そう、笑うだろうか』と言って先生は微笑んだんです


 哀しそうに…」



日はもう暮れている。


小暮と結木は食後のコーヒーを飲んでいるところだった。

結木の前にはデザートも置かれている。


前に置かれているティラミスにフォークを入れて

結木は美味しそうにそれを頬張った。



「…でもその約束は果たされたんだろう…

 君は言ってたよね、神坂先生と春に逢った、って」



小暮はカップをソーサーに乱暴に置いた。

そのはずみで少しコーヒーが零れてしまった。



「モノにあたっちゃ駄目ですよ、先輩」


結木は楽しそうに言った。



しかし、不図、真面目な顔に戻って、

結木は哀しげに言った。




「…先輩の仰った通りです


 神坂先生は、私の、忘れられない人です」