「先生」
私は正門前に佇む先生に声をかけた。
他のみんなは親が迎えに来ていたり、
自転車置き場の方へ向かっていた。
私の通う中学からは受ける人数が少なかったから
受けた全員が同じ教室だったので、
すべてが終わって教室を出る時間は、皆一緒だった。
勿論、翔野もだった。
翔野とは、朝に「お互い頑張ろう」
そして帰り際に「お疲れ」と声をかけあっただけだった。
聡子は親が迎えに来ていたし、
他の子はあまり話したことのない子が
ほとんどだったので、
「お疲れ様」とだけ言って、
一人正門に急いだのだ。先生に逢うために。
「おう、
…その顔だと、
上手くいったようだな、いい顔してる
明日の面接も、頑張れな」
神坂先生は笑いながら言った。
しかしすぐに真面目な顔に戻って、
「こっちきて」
と、私を、校舎の陰になったところに促した。
「…君にお願いがあるんだ
まだ学科しか終わっていないけど
おれはもう君については心配していない
ただ君が、重い話を今するのは嫌だ
と言うならば、今はしない
…聞いてくれるか?」
私は頷いた。
この人は何を言うのだろう。
私の心を揺るがすような台詞を投げかけてくるのだろうか。
「…結木」
彼の人に呼ばれる名前は、とても心地よく聞こえる。
いつの間に私はこの人に
こんなにもはまってしまったのだろうか。
「4年後の春に…
君が大学生になって1年経って落ち着いた頃に…
おれともう一度逢う約束をしてくれないか」