「これね、おれがT高受けた時に持って行ったやつ

 おれの念を込めといたから」



先生が差し出したのは、お守りだった。

手のひらにおさまるくらいの黒いお守り。

少しぼろぼろで、でも大事に保管されていたのだろう、

目立った傷は見られない。



「どこまでも、黒なんですね」



お礼を言う前に出た言葉はこれだった。

知らぬ間に私は笑っていた。



「先生の色」



私の言葉に、先生も一緒に笑った。



「ありがとうございます、先生




神坂先生とは1階で、階段を降り切ったところで

さよならをした。


先生が下まで送ってくれたのだ。



「言葉は曖昧なものでしかない

 そんなことおれも分かってる


 だからおれは君に、

 おれのあげられるものをあげたい


 そしてその代わりに、君がほしい」



神坂先生は、私の肩をポンと叩いて

昇降口から私を送り出した。



「また明日な」



闇に紛れた神坂先生は、

それでもはっきりと見えた。