「貴方が好き、
どこにも行かないで、私の傍にいて
先生と生徒の立場なんて、関係ないじゃない」
そう言えたら、どれだけ楽だったろう。
自分の気持ちを殺すことが、
こんなにもつらいものだなんて、初めて知った。
まさかこの人に教えられることになろうとは。
一緒に屋上を後にして、階段を下りている途中、
彼の人の横顔を見ながら、私は思った。
「ん?どうした?」
「なんでも…ありません…」
何も言えなかった。
そんな私を見て、先生はふっ…と笑った。
そして一段先に降りて、こちらをくるりと振り向いた。
私は俯いたまま、歩みを止めた。
「…結木」
先生の手が、左頬に伸びる。
一瞬のうちに、先生の顔が目の前にあった。
避ける暇もなかった。
「何か、言いたそうな顔をしているな
君はいつもそうやって、自分の言いたいことを
飲み込んでしまうんだね
たまには、そこらにいる他の子みたいに
わがままになってみたらどうだい?」
神坂先生はおちゃらけた感じでそう言った。
莫迦にしているのかこの人は。
私がそういう人間ではないことを、
一番分かってくれている人ではなかったのか。
私の心の中は、哀しみと怒りでいっぱいだった。