どのくらいそうしていただろうか。
先生のぬくもりを感じながら、
私は少しずつ暗くなっていく空を眺めていた。
そのうちに先生は落ち着いたのか、
そっと私の肩から顔をはずして、照れ笑いをし、こう言った。
「年甲斐もなく、しかも年下に甘えてしまったな…
おれ、教師失格だね、生徒にこんなことするなんて…」
生徒を好きになって、そして想いを交わして、
本当に後悔しているのなら、
この言葉は、もっと悲痛な叫びに聞こえるだろう。
しかしそうは聞こえなかった。
むしろその声ははずんだものに聞こえた。
なるようになったのだ。
これは必然なのだ。
好きだと思った人と、想いを交わせて
自分はとても幸せだった。
彼の人のそんな想いを、優しく笑うその瞳から
汲み取れるような気がした。
本当にそのように思ってくれているのなら
それはなんと幸せなことなのだろう。
私という存在を、生徒の枠組みの中でとらえず、
一人の人間として見てくれる…
それはなんと、嬉しいことなのだろう…
彼の人に想いを馳せる私に向かって、
先生は言った。
「じゃあ、明日の入試頑張ってな
まぁ榛名さんなら大丈夫だろうけど
あ、ちなみにおれがT高の引率だから
よろしくな、お嬢さん♪」
涙のあとはまだ残っている。
それでも平常心を装う彼の人は本当に大人だ。
「当たり前じゃないですか
首席しかねらってないんですから」
そしてそれに微笑み返す私もまた、
「行かないで、傍にいて」と先生にすがりきれない私もまた、
仮面をかぶり続けているのかもしれない。