「もし…

 おれが、中学生だったら…


 もしくは…中学生でなくても

 君と同じ年齢くらいの時に君と出逢っていたならば、


 おれたちは二人で、一緒に、幸せになれたのかな」



神坂先生が遠くを見ながら、ゆっくりと言う。


「おれは結局、君と一緒の時間を過ごすことは出来ない


 恋人同士の他愛なく甘い会話も

 どこかへ一緒に出掛けることも

 そしてずっと一緒にいることも…


 普通の恋人同士が望むようなことが何ひとつ出来ないまま

 君と離れなくてはいけない…」



神坂先生は、こちらを向いて、そっと私の頬を撫ぜた。


「君と出逢えて良かった

 だけど、幸せにしてあげられなくて、ごめんな」



神坂先生の頬を、彼の涙が伝う。


彼の中には、『私と付き合う』という選択肢はないようだった。

それは彼が何かを悟っていたからだろうか。



「今、この時に出逢ったから、私は神坂先生のことを

 想うようになったんだと思います…


 もし、同い年で、それこそ中学生同士で出逢っていたら

 こんな想いを持つことなんてなかったかもしれない…


 考えようですよ、先生

 私は貴方と、今この時に出逢えて、本当に幸せです…」



神坂先生の腕が、私の肩を抱いた。


私の肩に顔を埋めて、涙を流す先生は、

どこか小さい子どもを思わせた。


ゆっくりと先生の頭を撫ぜる…。



「ありがとう…

 おれも、そうだよ…」


耳元で囁く先生の声は、震えていた。