それから私たちは夕暮れの屋上で、
他愛もない会話をし続けた。
最初は私の中学生活のこと、中1や中2の頃の話を聞かれて
それに答えることが多かった。
だけど私は、先生の歩んできた人生を
知りたくて。
この人は、どんな道を歩んできたんだろう…
と想いを巡らせていた。
私は、自分が惹かれた彼の人について
もっと知りたいと思い始めていたのだ。
彼の人の中学生時代、高校生時代
そして大学生時代の話を楽しみながら聞いていた。
だけど、すべてを聞くのには
その時間では短すぎた。
もっと一緒にいれたなら、
これからもずっと一緒にいられるのであれば…
少しずつ、少しずつ、彼の人のことを知っていけるのに…
と哀しくなっていた。
しかし、私たちが、こんな他愛もない会話を
していたのには、もう一つ、わけがあった。
私たちは、お互い、分かっていたのだ。
‘もし’なんて言葉を使うべきではない、と。
たらればの世界…
その世界に入ればもう、
どうにもこうにも虚しくなるだけであろう。
その世界には入らない…
お互い、そう思っていた。
しかしこの暗黙の了解を破ったのは
彼の人だった。