「この中学に来て、君という存在を知って…

 

 …最初はさ、ただ、部のキャプテンってことで

 何となく興味があっただけだった


 でも、その子が生徒会長をしてるとか、

 秀才だとか優等生だとか性格も良いとか

 誰に聞いても良い評判しか出てこなくてさ…


 それは本当に、そうなのかな?って

 まだ君を見ぬうちから思うようになったんだ


 君は、まだ中学生なのに、

 大人のかぶるような‘仮面’をかぶってるんじゃないかってね



神坂先生は、悪戯な笑みを浮かべ、

左手を自分の顔に持って行き、仮面をとる仕草をした。



「そりゃさ、人間は誰しもが、‘その人’っていう役を

 演じてるんじゃないかって思わされる時はあるし、

 大人になればなるほど、様々な仮面を使い分けてる自分に

 不図気付く時がある…



 だけど…今までいろんな中学生を見てきたけれど、

 いや、色んな人間を見てきたけど…


 君ほど上手く仮面をつけている人は初めて見たし…


 それ故に…かな…

 君に、惹かれたんだ


 仮面の下にいるはずの‘君’をもっと知りたくて、ね」



この時私は、少し戸惑った顔をしてしまっていたと思う。

神坂先生の人生観が、自分の思っていた人生観と同じだったからだ。



「おれは、君の仮面をはずす存在に

 なり得たのかな」



いつの間にか涙が頬を伝っていたようで。

彼の人の指がそれを優しく辿る。


あぁ、視界がぼやけていたのはこのためだったのかと

今更ながらに気付いた。



「今、この時だけは…

 君は君そのものだと、そう、信じてもいいかな」


本当に愛おしそうに私を見つめる彼の人の目に

視線を捕えられながら、私はゆっくりと喋った。



「仮面をつけているなんて、意識していないから

 ‘そのままの自分’と言われても私には分からないけれど…


 今、こうして先生のことを想う自分は

 確かに存在しています」



彼の人は、ふっと笑って、私を抱き締めた。