「私は、まだ子どもだけれど…


 ひとりの人間として、

 同じひとりの人間の神坂先生に

 魅かれているのです…」



そこまで言って、私は言葉を一旦止めた。



自分の中に、まだまだ伝えたいことは

あるような気がしたが、


その一方で、これ以外の何を言っても

これ以上の想いを伝えることは出来ないだろう

というところまで言い切った気もしていた。




「君がそこまで言ってくれたのに、

 おれがずっと黙っているのでは、

 おれの面目が立たないな」



神坂先生が、近寄って来る。


そっと手を伸ばしてきた先生の右手が、

私の左頬を撫ぜた。




夕日はまだ、西の空に残っている。

日が長くなったなぁと関係ないことを考えてしまう。



この時間が、永遠に続けばいいのにとさえ

思ってしまう自分がいる。





そんなこと、あるはずもないものを。




神坂先生が目を細めて、

ゆっくりと喋りだす。


私にとって、先生でも、遠い存在でもなくて、

ひとりの人間として、彼の人はそこに立っていた。





「想いを伝えてくれて、ありがとう

 


 おれは、ここの中学に来て、

 そして君に逢えて…



 本当に、良かったよ」