最後の自習教室の日。
不図、時計を見ると、いつの間にか17時半だった。
2時間程だったが、本当に集中していたらしい。
あと30分程いられたのだが、私にはもう留まる気はなく、
静かに片づけをし、5人程残っていた教室をあとにした。
教室を出ると、一瞬、廊下がとても眩しく感じ、
目をつぶってしまった。
そっと目を開けると、
窓から柔らかな飴色の日差しが差し込んでいて
廊下をオレンジ色に染めていた。
私は窓の方へ行き、ガラスに手をつき、
外を眺めた。
穏やかな、気持ちだった。
やることはすべてやったと、そう思えた。
不安も心細さもなかった。
自然と笑みがこぼれるのが分かった。
窓から少し離れ、歩き出したその時、
少し行った先の職員室の扉が開く音が聞こえた。
ゆっくりと顔を上げ、眼をそちらに向けると、
黒いロングコートをまとった、神坂先生が
出てくるのが見えた。
歩みを止めて、視線を逸らさずにいると、
神坂先生は視線を感じたのか、こちらに気付いたようで。
とても優しい笑みを浮かべながら
ゆっくりと私の方に歩いてきた。
「屋上でも、行かないか」
そう、悪戯っ子のように笑った先生の右手には、
1つの鈍い銀色の光を放つ鍵が握られていた。