「話を聞いていると、君たちは、中学生にしては
随分大人びているように思えるよ」
話しているときに出てきていたメインディッシュに
ナイフとフォークを入れながら
小暮は感心したように声に出した。
「感情的というより、実に冷静で理論的だね
恋はそんなにも冷静に片付くものなのかな」
その言葉は別に皮肉とかではなくて、
ただ純粋な疑問を述べているだけのように思えた。
「…あの頃は、私自身、普段から
感情的になることは避けていましたし…
あの時も、頭の中は怖いくらい冷静でしたね
本当に、冴えていた…というか
透明な水のように澄んでいた…というか…」
結木は、それでも首を傾げながら続けた。
どうしてあの時そんなにも冷静だったのか、
その理由は、今の彼女も分からないようだ。
「君の話だと、卒業まであと1ヵ月ってわけだけど…
神坂先生とは何か進展があったのかい?
おれが、君の過去に嫉妬してしまうような
そんな出来事が」
後半の言葉を言った時、
小暮はとても真剣な目をしていた。
‘この人は…私のことを、
本当に想ってくれているのだろうか
私の過去に嫉妬する…
もう終わっていることなのに…
神坂先生は、翔野だけではなく、
その姿をみたことのない人…
その声を聞いたことのない人にまで
嫉妬をさせるのか’
結木は少し驚いていた。
まだ小暮とは特別な関係であるわけではない。
そう遠くない未来に、特別な関係になるとしても、だ。
だけど、神坂先生は、この人を真剣にさせている。
‘もう二度と逢えないとしても、もしどこかでいつか
私たちの人生が交差することがあるのならば…
この話を伝えてみるのもいいかもしれない
あの人は、意表をつかれたような顔をして、笑うだろうか’
それを想像すると、結木は自然に笑みを零していた。
それはハッとするほど美しい微笑で。
そしてそのまま、話を続けた。