「そうか…

 じゃあ、この関係は一旦解消…ってことだね…?


 そこまで翔野が考えてくれて、

 私だけ中途半端なままなんて、嫌だもの」


私もひとつひとつ言葉を選びながら、翔野にそう伝えた。


流石に躊躇いもあったけれど

自分に向き合ってくれる彼から逃げるわけにはいかなかった。


その答えを予想していたのか、翔野の口調は穏やかで。

どこかホッとしたものを感じた。


「うん…それでさ…


 受験が終わって、卒業式の日に、

 少しだけ時間をくれないか」


翔野の唇に、少し笑みが浮かぶ。

穏やかな、眼。私の好きな、柔らかい笑顔。


「もう一度、想いを伝えにいくからさ


 その時、もしおれと一緒にいたいと思っていてくれたなら、

 おれはもう君から離れたりはしないし、

 君を離したりはしないよ」


「私は…自分という人間のことを

 よく理解しているわけでもないし、

 未来のことは全く分からないけれど…


 きちんと何らかの答えを出すよ

 それまで、待っていてくれるの?」


「あぁ、待つよ」


彼の人は、他の男子よりももともと大人っぽかった。

だけど今は、完全に、大人の男の人の眼をしていた。


「ありがとう」


もうすでに乾いてしまってた頬を伝った涙のあとに触れ、

この涙を無駄にはすまいと誓った。



「絶対、T高校に受かろうな

 まぁ、おれらなら大丈夫だろうけど」


翔野は笑って言った。気持ちいい笑いだった。

私も目を細めて同調した。


「油断はしちゃダメだよ

 でも、私たちなら大丈夫でしょ」



あの頃の、この関係。

私たちは、‘一旦別れた期間’だとは言わなかったし、

今もそう言わない。