「ど…どしたん?何があったん?」


神坂先生は、かなり慌てていた。


まぁそうだろう、いつもは冷静で、

涙なぞ見せないような私が泣いているのだから。



「上がらんかったんです…

 上がらないかん試験やったのに…


 何も変わらなかった…!」


しゃくりあげることはせず、それだけを言った。

震える声を抑えて。


「何でこんなところで、裏切られないかんの?

 私…頑張ったのに…

 努力なんて、あてにならない…」


「本当に、そう思うのか?」


途中で遮られた私の言葉。

遮ったのは、当たり前だが、神坂先生で。


でも、いつもとは違うくて。


彼は、今まで何度か聞いたことのある、

大人の男の人の口調で、諭すように話し始めた。


「おれはさ、君の実力は、T高に行くには

 十分すぎるくらいあると思う


 これはお世辞とか気休めとかじゃない

 君なら、T高でもトップクラスになれると思う


 それは…たしかに今までの君の成績から

 判断している部分が大きいけれど…


 君は…ずっと、努力してきたんじゃないのか?


 僕は…君は天才型というよりは

 努力型の人間だと思うし、

 

 その性格を裏切ることなく中学3年の1年間を

 過ごしてきたように思う


図書室のドアの近くにいる先生。

図書室の窓辺に立つ私。



その距離は、その時の私には、



遠かった。