美月が神坂先生のことを好いているのは、
傍目にも明らかだった。
でも私はそれでも別にいいと思っていた。
神坂先生を好きになることで、
美月はかなり変わったと思うからだ。
‘人に認めてもらいたい’と思う気持ちが
良い方向に出たパターンだと思う。
社会で分からないところがあれば聞きに行き、
他の科目も頑張っている彼女。
引退する前のソフトでも、普段の練習以外にも自主練をして
自分の役割をしっかり果たしきった彼女。
神坂先生の来る前までの美月は、
どこかいい加減な、適当なところがあったが、
そんな性格はすっかり影を潜めていて。
今や、南高の推薦を狙えるまでになった。
彼女はきっと、南高に合格するだろう。
そしてもっともっと綺麗になるのだろう。
頑張れば頑張るほど、人間は美しくなれる。
でも、そんな美月に、
美月の気持ちを承知しているくせに、
優しくしない神坂先生のことは、
私は嫌いだった。
私を一人の人間として認めてくれるのならば、
美月もまた一人の人間として認めるべきじゃないかと
思ったのだ。
私や美月だけではない。他の生徒だってそうだ。
みんな、ひとりの人間にかわりはない。
神坂先生の年賀状と、美月のメールを見比べながら、
私はそんなとりとめのないことを考えていた。
それでも私は…
もし神坂先生が他の子のこともそういうふうに見ていたら、
嫉妬していたかもしれないな…
なんて思ったりもした。
不思議だった。
矛盾している自分が、全くおかしいとは思えなかった。