神坂先生からの電話は、22時を5分ほど過ぎた頃に

かかってきた。


誰からかかってきたのか分かっていたため、

私はそのまま受話器をとった。



「もしもし、榛名さんのお宅でしょうか」


神坂先生の声は、電話で聞くとまた違う気がする。


「はい、神坂先生ですね、榛名です

 どうかされたんですか?」


私は畳み掛けるように言った。


何故か無性に腹が立って仕方がなかった。

どうせ中野先輩のことを言われるんだろうと思っていたからだ。


いちいちそんなことまで言われるのは嫌だった。

中野先輩や翔野と仲良くするのは私の勝手であって、

神坂先生には何も関係のないことだと思ったからだ。



「うん、榛名さんにお願いがあるんだ

 明日、部活に来てほしいんだ」


「え?」


これは予想外だった。

部活に来てくれなんて言われるとは思っていない。


「どうしてですか?」


「それがさ、今みんなに声をかけてるんだけど

 1,2年の子たちが君たちに指導に来てほしいって

 言ってるんだ


 君たちが引退してからもうすぐ一か月になるけど

 後輩たちも暑い中すごく頑張っててなー

 君たちと簡単に試合したいって言うんだ

 

 君たちが引退してから何人かまた新入部員が

 入ったから、9対9で出来ると思うんだよ


 一応みんな来てくれるらしいから

 榛名さんはどうかなと思って


 どうかな…?」



私は何故かその時、とても哀しい気持ちに襲われた。


もう神坂先生は自分のことをなんとも思っていない…

そういう結論に達した瞬間だった。


それを望んでいたはずなのに、

それが分かって哀しいと思う矛盾した自分が、


とても哀しく思えたんだ。