試合には、敗れた。



R中は、流石、R中だった。


言葉通り、最初から1軍が出てきた。

チームを見ると、監督はまだ若い人。

その後ろにフェンスを挟んで、少し大柄な女の人が立っていた。


あぁあれが羽田さんのお母さんって人なのだろうか?


と思いつつ見てると、その女の人はいろんな場面で

若い監督に指示を出しているようだった。



「おれは、傀儡の監督だった」



なるほどなと、思った。



試合は、7回まであった。

コールド負けではなく、点数も7-3での敗北だった。


これは、これまで2軍で勝ち上がり、

当たったチームすべてにコールド勝ちしていたR中には

衝撃を与えたようだった。


うちのピッチャーを打てなかったわけではない。

彼らのバットは快音を響かせていた。


しかし、私たちのその時の動きは冴えていた。

火事場の馬鹿力とでも言おうか、ファインプレー続出だった。


しかし打つ方が追い付かなかった。

相手の珍しいミスや、まぐれあたりで何とか3点をとったものの、


自分たちの打撃力のなさを感じた。



この試合後、私は羽田さんに呼び止められた。



「今日は私たちが勝ったけど…この試合中とても怖かった

 初めて負けるんじゃないかと思った


失礼な言い方かもしれんけど…

 どうしてそんなに…強くなったの?



彼女はこう言った。

どうやらこれはお母さんの指示ではないみたいだ。


彼女は、うちのチームが、近い将来強敵になるだろうことを

分かっていたのかもしれない。


その原因を突き止めようとする姿勢は立派なものだ。



「神坂先生のおかげやで」


私はひとことそう言った。



「そっか、神坂先生のやり方と貴方達の努力が、

 上手くマッチしたんやね」


私の一言で、羽田さんはすべてを悟ったようだ。



「いいなぁ

 神坂先生って、良い監督やと思うよ


 私はお母さんがあんなんやけんさー

 神坂先生、かなり悩んでたみたいやったし

 監督業をまっとうできんかったと思う…


 でも、私も出来ることなら、

 神坂先生とチームを作りたかったなー」


羽田さんは気持ちのいい笑い方をする人だった。



「今度は、矢野先生がうちのお母さんの犠牲になってる

 

 だけど、まぁ私が引退すれば、

 Rのソフト部も変わると思うわ

 私は貴方たちが羨ましいな

 また、県体で会えるといいね!」



そういって羽田さんは去って行った。



そして表彰式のあと、

私は家に帰って泥のように眠ったのである。