「違うよ」
と神坂先生は哀しげに笑った。
「違うなら、どうして
そんな笑い方をするんですか…」
私はいつの間にかムキになっていた。
こんなの賀川先生に対する態度以来だった。
少し間をおいて先生は話し始めた。
「…幸せだなぁと思ったんだ
ここで…このK中学のソフトボール部の監督を
することが出来て…さ」
「へ?」
意外な言葉に私は戸惑った。
そんな私を見て神坂先生は意外そうな顔をして
それでも続けた。
「R中学はな、確かに強い
強い分だけ、おれは必要とはされてなかったんだ
おれは傀儡の監督だった
指示はすべて羽田さんとその母親がしてたようなもんだ」
「そう…だったんですか」
まぁそういうこともあるかもしれない。
強豪校なら尚更だ。それに先生もまだ若い。
「でも、それってもったいないですよね
神坂先生の指導を受けないなんて
私たちがここまで来れたのは神坂先生のおかげです
みんな感謝してるんですよ」
私は今度はR中学のメンバーに怒っていた。
「でも…先生としては向こうのキャプテンの方が
良かったんじゃないですか…?
素直で可愛らしい子みたいだし…」
言ってから気付いた。
これは嫉妬だ。
神坂先生と仲の良さそうな羽田キャプテンに対する
嫉妬でしかない。
「いや、おれは榛名さんの方がいいよ」
神坂先生はもう哀しげな笑みを浮かべなかった。
優しい穏やかないつもの笑みだった。