「おれたちは5回まで負けていた

 相手は、少しずつ少しずつの加点だったが、

 負けていることには変わりなかった


 チームの雰囲気も悪くなってきた時、

 監督がおれらに円陣を組ませた


 そして言ってくれたんだ


 『おれはおまえらがいつもいつも

 一生懸命に練習してきたことを知ってる


 おれはおまえらはこんなところで

 終わるようなチームだとは思ってない


 なら何故今負けているのか、分かるか


 それはおまえらが、この試合の場で、

 一生懸命ではないからだ


 練習は裏切らない


 だかおまえたちは今、

 どんな時も裏切らない練習を、裏切っている


 油断することによってな


 油断をするなんて、

 相手チームに失礼だと思え

 

 そして、今まで一生懸命練習してきた、

 お前たち自身にも失礼だと思え!


 いいか、あと4回残ってるんだ

 諦めることは許さん

 油断し続けるのも許さん


 おれはおまえらと、もう少し長く

 野球をやっていたいんだ』


 ってな」


神坂先生は、穏やかな笑みを浮かべた。


「おれたちは目が覚めたように

 一生懸命プレーして、勝てたんだ


 あの言葉がなけりゃおれたちは負けてた

 って、その時も思ったし、

 今こうやって顧問をしていてもそう思うんだ


 おれが君たちに言いたいことは、3つだ。


 練習してきた自分を、油断や諦めによって裏切るな

 そして必ず決勝まで行け


 あとな…おれは君たちと、もう少し長く

 ソフトボールをしていたいんだ」



周りを見渡すと、涙目になっている子もいた。


神坂先生は穏やかな笑みを浮かべて

みんなを見つめていた。



「さ、練習するか!

 時間食って、悪かったな!


 でも、おれの言葉が君たちの中に少しでも

 残ってくれたらと思うよ


 おれは君たちの部活を見られて、良かったから」



「気をつけ!」


私はいつの間にか、こう言っていた。

いつも解散時に先生に言う号令だ。


「礼!」


「ありがとうございました!」



みんな、そう言って、グラウンドに散らばった。

私は少しその場に残って、先生の傍に近寄った。


「どうした?榛名さん」


神坂先生が不思議そうな顔をする。



「絶対勝ちますから!そして優勝します!」


私は自分がこんなに熱くなれるなんて知らなかった。

‘優勝校に勝ちたい’そう、本気で思えた。


「あぁ、期待してるよ、キャプテン」


神坂先生は笑った。

私も笑った。


「さぁ、練習や!」


グラウンドに、掛け声が響いた。