「ねぇねぇ、神坂先生ってさ、
結木のこと、好きなんとちゃう?」
自転車をこいで5分くらいしたころ、
隣を走っていた沙弥が唐突に言い出した。
「…へ?…何…?急に…」
私は正直狼狽した。
でも救いは、‘私が神坂先生を’ではなく、
‘神坂先生が私を’と、沙弥が言ったところだった。
「んー何となく、そう思うんだー
神坂先生ってさ、美月には全く興味なさそうでしょ?
それは分かるよね?」
「うん、分かるよ」
確かに神坂先生は、美月のことを体よくかわしているとしか
思えない態度をとっている。
「でもさ…結木にはすごく優しいと思うんだ」
「えっ?何で?」
「あの人、結木を見つめる時、すごく優しい眼をしているんだもの
結木と話してる時もそうだよ、すごく優しげな眼をしてる
それに結木がさっさと部室に行ったら、
一瞬引きとめたそうな顔をするし」
沙弥は何も含んだところがないような声でそう言った。
ただ純粋に、思った事を述べているだけのようだった。
「だから、神坂先生が私のこと、‘好き’って?
それは飛躍しすぎだよ」
私はなるべく自然に聞こえるよう注意を払い、笑って返した。
「んーそうなのかもしれない
まー相手は先生だし、こっちは中学生だし
でもさー結木のこと、大事にしてるとは思うよ」
「あ、もうすぐ着くね、みんないるみたいだ」
私は半ば強引に話をそらせた。
もうこれ以上、神坂先生のことを考えたくはなかったのだ。