絶大なようだった。
その日の部活後、校門で生徒を見送っていた神坂先生は、
私たちを見た瞬間、少し驚いたような顔をしていた。
しかし、何か言わなければいけないと思ったのか、
「珍しいな、3人なんて
大月が中に入ってるなんて」
と声をかけてきた。
神坂先生が、翔野の名前を知っているというのは、
ごく当たり前のことだった。
翔野は、私とはクラスが違ったが、
翔野のクラスもまた、神坂先生が社会を担当していたからだ。
それに翔野もまた、神坂先生の作った中間テストで、
85点をとっていた。
あとは聡子が83点をとっていた以外、
80点代の生徒がいなかったというので
神坂先生の中に翔野が印象付けられていたのも、当然だったろう。
「今から塾なんですよ
3人とも、同じ塾なので」
私は笑って神坂先生に答えた。
そのあとを引き継いだのは、聡子だった。
「もう、2人で行ってくれればいいのに
私はあてられっぱなしですよ
こんなことなら一人で寂しく行く方がいい」
聡子は冗談っぽくそういって笑った。
神坂先生の表情が、凍りつくのが、はっきりと分かった。
「え?大月と榛名さんって付き合ってるの?」
しかしそこは流石先生。
すぐに表情をいつもの柔らかい笑みに戻して、そう言った。
「ええ」
私は肯定した。
「そうか、恋もいいけど、勉強もちゃんとしろよ」
「はーい、先生さよーなら」
少し拍子抜けな気もしたが、先生が冷静でいて、
私にちょっかいをかけてこないなら、それで良かった。
効果は抜群みたいだ。
私は一人、満足だった。
しかし…のちに神坂先生は、こう言っていた。
このとき初めて、私と翔野が付き合っていたことを知ったと。
そして、
言葉にならないくらいの嫉妬を抱いていたということを。