「どうしたの?」
という声に、私は我に帰った。
「ボーっとしていたみたいだ、
榛名さんにしては珍しいね
何を考えていたの?」
「……私は、先生が怖かったんです」
やっとの思いで出した言葉は、これだった。
「え?」
神坂先生が戸惑うのがよく分かった。
「何故そう思ったのか、最初は分からなかった
だけど今なら分かる…
先生は私にないものを持ってるから…
その素直さも、優しさも、大人なところも…
全部私が持ってないもの…
そこに憧れて、でも逆に怖くもあった…
それに…私は先生が分からない…
何を考えているのか、
どうして私の傍に来るのか、
普段の先生とは違うところがあるみたいで、
今見てる優しい人気な先生は、幻影みたいで、
分からないから、怖い…」
一気に行ってしまったあとで、私は後悔した。
なんと失礼なことを口走ってしまったのだろう。
神坂先生が呆然としているのが見える。
「あ…すみませ…
こんなこというつもりじゃ、なかった…
神坂先生に気にかけてもらえてるなんて、
私の勘違いですよね?
先生は、私の肩書きを気にしてらっしゃるのでしょう」
少しずつ後ずさりながら言い訳をしつつ、
私は彼の傍から離れようとした。すると
「あ」
神坂先生に、両腕を掴まれた。
流石男の人の力だった。振りほどけない。
「離してくださ…」
彼と眼を合わせた瞬間、私は言葉を失った。
彼の瞳は、憂いを含んで、でも真剣で…
私は眼をそらせなかった。
「おれが君の傍に行くのは…
君という人間に、興味があるからだ」