「逃げてなんかいません


私はしっかりと神坂先生の眼を見据えて答えた。



「嘘をつかなくていい

 おれから逃げただろう


 さっき、おれが君に声をかけた時」



‘逃げる’


頭の中ではそう分かっていても、

実際に神坂先生に言われると、何故か無性に腹が立った。



「私を呼んだんですか?

 それは、聞こえなかったのかもしれません・・・

 すみません」


私は最後までしらを切り通すことに決めた。



「嘘をつけ


 あのあと川島さんが君を呼んでいた

 『神坂先生が呼んでるよ』ってな


 それも聞こえなかったのか?

 おれには聞こえないふりをしているようにしか

 見えなかったけどな」



そうだ、神坂先生が私を呼んだことについては

私はまだ誤魔化せる。


だけど、聡子が私を呼んだことについては…

聞こえてなければむしろおかしいのだ。



聡子はあんなに近くにいたのだから。



「・・・・・・」


私は言葉に詰まった。