私は悔しかったのだ。
最初、あの人のこと‘怖い’と感じて、
避けようとしていた自分を、
妥協して、神坂先生に話しかけてるんだ
と思っていた自分を、
裏切ることになってしまったことが。
神坂先生のことなんて、
何とも思っていなかった
はずだった。
だからこそ、
声を聞いただけで、
近くにいるのが分かっただけで、
こころのどこかで話しかけられるのを
期待している自分がいることに愕然とした。
そして、そんな自分が許せなかった。
恋だの愛だの、そんな感情があったわけではない。
それでも、あの人との会話をこころ待ちにしていた自分が
許せなかった。
同時に哀しくもなった。
私はあの人のテストに完璧に負けた。
それを実感していた。
あの時、美月が先生に言ってたことは、
もし私が他の生徒と同じように、
自然に神坂先生と接することが出来ていたら、
口走ったであろう言葉だったから。
‘難しかった…’
そう思わされたことが、すごく哀しかった。
「塾…行くかぁ」
くよくよしてても仕方がない。
明日もテストなのだから。
私は荷物を取りに行くために
一度教室に戻ることにした。