「多分、君が神坂先生という人のことを
認識する前…
君が 『妥協する』ずっと前から、
神坂先生は君のことを、想っていたんだね。」
小暮が一旦結木の話を遮った。
「そう、思います?」
結木もそれに逆らわず、
肯定も否定もせず、逆に小暮に問う。
「あぁ、思うよ
でも、神坂先生は、どこで…
いつから君のことを想っていたんだろう…?
どうして君のことを想うに至ったんだろう?
初めて会ったのは、始業式の時だったんだろう?」
「そ…うですね
私もそれは不思議でした
神坂先生の想いに気づいた時は
だってあとから考えてみれば、
確かにこの頃にはもう、
神坂先生は、私の傍にいようと努めていた…
私の傍に、まるで、影のように
でも、それがどういう要素からだったのかは
ずっと知らないままでした」
「『ずっと知らないままだった』ってことは、
今は知っているんだね」
「ええ…
いつからか、も
どうしてか、も
だけど、それを知るのは、
ずっとずっと、あとのことでしたよ」