賀川先生と、お互い笑いながら
火花を散らしているとき、
「ふっ」というような笑い声が聞こえてきた。
その声は、―私でも分かった―
神坂先生のものだった。
私はその声を聞いても、神坂先生の方に向いて
彼に話しかけることはなかった。
だから、彼がどんな顔をしていたかなんて
彼がどんな気持ちで笑ったかなんて、
全く分からなかった。
賀川先生に挨拶をして、そのまま校門を出る。
「ねぇ、神坂先生笑ってたね」
聡子が話しかけてくる。
「あぁ、やっぱりアレ、神坂先生だったんだ?」
気にしていないふうを装って聞く。
「うん、いつ来てたのか分からないんだけどさ、
賀川先生の近くにいたでしょ
結木と賀川先生の会話聞いて、笑ってたよ」
「笑うようなこと、私言ってた?」
不思議だった。
面白いことはない一つ言っていない。
あれは、私と賀川先生だけの世界なのだから。
他の人は入れるはずもない。
「普段はクールな結木が熱くなってたのが
面白かったんじゃない?」
聡子が笑う。
塾につくまでにとりとめのない会話を続けたが、
その一方で私は神坂先生のことを考えていた。