「こんにちはー」
フリーバッティングをしていた部員たちが
こちらを振り向いて挨拶してくる。
入学式の準備を終えた私と聡子は
着替えてグラウンドへ向かっていたのだ。
「こんにちは」
みんなに挨拶したあと、
私は神坂先生の方に向かった。
「結木・・・?」
聡子が訝しげな顔をしてこちらを見る。
私は少し微笑んで、先生の方へ足を向けた。
「こんにちは」
神坂先生が少し驚いたようにこちらを見た。
「・・・あ、こんにちは」
少し戸惑ったように、でも笑って答えてくれる。
「2日間遅れてすみませんでした
5月の体育祭まで大きい行事はないんですが、
また委員会等で遅れることもあるので、すみません」
丁寧に言葉を選びながら
しっかりと神坂先生の眼を見据えて話した。
「あぁ、構わないよ
遅れるときは俺に言ってくれればいいから」
「分かりました」
と言いながら、
先生のもとから去ろうとしたとき、
「あっ、ちょっと」
私は神坂先生に呼び止められた。
「はい?」
もう一度神坂先生の方を振り向く。
「部活後、少し残ってもらえるかな
部活のことで色々聞きたいんだ」
一度断られたからか、
その口調は少し不安そうだった。
「ええ、いいですよ」
それを聞いた神坂先生は
ホッとしたようで。
「じゃあ、部活終わって荷物まとめたら
職員室の俺のところへ来てくれ」
「分かりました」
どうして承諾したのか。
結局私は、
彼の人を得体の知れない人と思っていても、
このときにはもう、
こころのどこかで、
惹かれていたのかもしれない。